14

ひかりの元まで帰ってくると、膝を両手でつかみ、はあはあと肩で息をした。

「なんか、信じられないですよ。…ひかりさんに助けてもらったとはいっても、俺が、怪人をやっつけただなんて」

「いいえ、博斗さん。あなたにはまだまだ力があります。これから、さらにその力が、引き出されていくはずです」


「はは。ならいいですけどね。でも、正直言って、やっぱ怖いですよ。戦うって」

「はい」

ひかりは、続けて、小さく言った。

「そして、空しいことです。出来ることならば、早く、すべて終わりにしたい」


二人の元に、意識を取り戻したセルジナと、セルジナに肩を貸しているあやめがやってきた。


「ほら、しっかりしてくださいよ、セルジナさん!」

「お、オーウ…。ミスあやめ、強い人ね」

セルジナは、あやめに叱咤され、しどろもどろになっている。


「セルジナ王子、怪我はないか?」

「はいー。おかげさまですー」

「そりゃよかったよ。あんたになんかあったら、この国の一大事だからな」


「ミスタ博斗…」

セルジナは、疲れた顔を引き締め、博斗に言った。

「うーん?」


「ワターシ、何も見ていませーん。ワターシも、ミスあやめも、ワターシのガードもみんなね」

セルジナはにっこり笑った。

「ミスタ博斗、ワターシ達、ここでウェイトしまーす。ユーのミッションを、しっかりやってきてくださーい」


「ありがとう、セルジナ」

博斗は、セルジナに軽く手を振った。

「じゃな、後で。もう、あいつらはこないと思うから、心配するな」


二人が歩き始めると、後ろからあやめが呼んだ。

「ねえ、博斗さん?」


「ん?」

博斗は首だけ後ろに向けた。

「あやめさんも、何も見ていない、何も聞いていないんだ。オーケー?」


「そ、それはいいんですけど、その…ただの変態かと思ってたけど…そういうわけでもないんですね、あなたって」


博斗は、にっと笑った。

「ああ。ものすごく変態なんだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る