11

シータは剣を振りかざすと、五人めがけてなぎ払った。

剣から放たれた閃光が足元で爆発し、五人は地面に倒れた。

「その程度では、四神官にも勝てんぞ」


「な、なんですって!」

レッドは憤った。その指摘が真実だと感じたための憤りだった。


自分達には、まだ、力も技も経験も足りないのだ。

五人いて、シータにまるで稽古をつけてもらっているかのように軽くあしらわれている。


「あたし達は、ここで負けるわけにはいかないのよ! あたし達を信頼してくれた博斗先生に、応えないといけないんだから!」


シータは、くすりと笑った。

「また、瀬谷博斗か」


「みんな、スクールフラッグよ!」


「了解ですわ!」

四人はすかさずスクールフラッグの構えをとった。


シータは、何の反応もせずにその構えを見ていたが、淡々とつぶやいた。

「その技には欠陥が多すぎる。出来るだけ早く、新しい技を考えたほうがよい。私にその技は通用しない」


むっとしたレッドは、その言葉に答えず、命令を下した。

「スクールフラッグ、GO!」


四人からフラッグが勢いよく飛び出し、シータを一瞬にして包み込んだ。

包まれたシータは、もがこうともせず、宙に釣り上げられていった。


「レッド!」

四人がレッドを呼んだ。

レッドは、狙いすました一投を、天に届けとばかりに繰り出す。


レッドの手から放たれた旗竿は、赤熱し、鮮やかなエネルギーの炎に包まれながら、フラッグに包み込まれて身動きのとれないシータの体を一気に刺し貫いた。


空間が陽炎のように歪み変色した。

一瞬して、辺りは、激しい爆発に包まれた。


爆発がおさまりかけ、レッドは顔を上げた。

辺りの草や石畳が、爆発の激しさを物語るように、ところどころ茶色く焦げている。


そして、鈍く光る黒い破片がそこらじゅうに転がっていた。


「シータは…? あたし達、勝ったの?」

レッドは呆然とつぶやいた。


「その…ようだね」

グリーンが、黒いものを手に持って、四人に見せた。

それは、半分砕け、その裂け目が溶けていたが、はっきりとわかる、シータの仮面の片割れだった。


「ほ、ほほ、おっほほほほ」

イエローが、弾けたように笑い始めた。

「勝利、ですわ。おっほほほほ」


「自分の力を、過信しすぎたのかしら」

レッドは、力なく言った。

最大の敵の一人を倒したというのに、なんとなく浮かない。

それは、この仮面の下にある素顔を、結局見ることが出来なかったからかもしれない。


あるいは、まるで子どものように扱われていた自分達が、たった一つの必殺技で、あっけなく勝利を収めてしまったという、釈然としない、つまり簡単に言えば、レッドの性に合わない勝ち方だったからかもしれない。


「なんにしても、シータはもういません。わたし達の妨害をするものは、もういないということです」

ブラックが、黒く口を開けている神殿の入り口を指差した。


「そうね」

レッドはうなずいた。

「シータを、倒すことが出来たんだもの。きっと、神官っていうのだって、倒せるわ」


レッドを見た五人は、うなずいた。シータを倒したという自信が、五人に溢れていた。

「中に、行くわよ!」

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