10

七人は、神殿に続く石畳を歩いた。


左右には、膝よりやや高い程度の高さの奇妙なオブジェクトが並んでいる。

人間を誇張したように見えるが、ヘルメットのような角ばった頭部や、ひょうたんのように膨らんだ腰の辺りを見ると、このデフォルメにはなにか意味があるのではないかと思えてくる。


左右のオブジェクトが断たれ、そこには突然、水が存在するようになった。

幅十メートルはあると見える堀には、いまも、碧みがかった深い色の水がたたえられていた。

大きな浮草のまわりに、寄り添うように、辺りから舞った葉や枝が浮いている。


堀には、石で造られた頑丈そうな橋が渡されている。

横幅は、博斗とひかりの後ろで、五人が横に並んでも問題がないほどの充分な幅だ。


橋を歩いていくと、神殿の入り口がはっきりと見えてきた。

ピラミッドの面が切り取られたようになっていて、入り口がある。

入り口の左右にがっしりとした石柱が立ち、強い意志のない侵入者を拒否するかのようである。


鋭い耳鳴りのような音を感じて、博斗は顔をしかめて思わず耳を押さえた。

七人の眼前の空間がぶぅんと歪んだかと思うと、夜のような黒い影が現れた。


「奇遇だな。こんな地球の裏側で君たちに会えるとは」

「シータ!」


「シータさん…どういうつもりですか」

ひかりが、小さく言った。


シータは、抜き身の剣を体の前に突き出し、博斗達を威嚇した。

「お前達をこの先に行かせるわけにはいかない。中に入りたければ、私を倒して行け。お前達の仲間も、いまごろ怪人に襲われているぞ」

「なんだって?」


かすかな声が、背後の森を越えて博斗の耳に届いた。

「きゃーーーっ! だ、誰かーっ!」


「い、いまの声は、あやめさんじゃないのか?」

博斗は思わず振り返ったが、背後にはいま博斗達がやってきた森が見えるだけで、セルジナ達の様子が見えるはずもない。


「そのようですね」

ひかりが、うなずいた。


シータが、一歩進み出た。

「さあ、どうする? 私を倒して中に入らなければ、四神官の復活は止められんぞ」


博斗は歯ぎしりした。シータと戦っている間にも、セルジナ達が怪人に襲われている。


「キャップ。ここは、この子達に任せましょう」

ひかりが、博斗にささやいた。

「え?」


「スクールファイブなら、シータさんに、きっと勝てます。だから、私たちで、セルジナさん達を助けに」


博斗は、ひかりを見た。

「…よし、みんな! 頼むぞ。俺達も急いで追いかけるから!」


「待ってました! 任せてください! だって、四神官って、シータと同じぐらい強いんでしょ? だったら、いまここでシータを倒せなかったら、神官を倒すのだってムリよ。ええ、あたし達やってみます! だから、王子様を!」


橋の上で横一列に並んだ五人が、スクールファイブに姿を変えた。


「そう、その姿変えには、やや時間がかかりすぎているな」

シータはつぶやくように言った。

そして、急に口調を変え、猛々しく叫ぶと、疾風のように飛びかかってきた。

「お前達がどれほど腕を上げたか、みてやろう!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る