11

博斗は、窓の外の中庭を眺めながら、時の過ぎるのをじっと待った。


実験室の中からはなんの音もせず、博斗には、ひかりが桜とどんな話をしているのか知る由もなかった。


突然ドアが開き、桜と、その後ろからひかりが現れた。

桜は、眼鏡を輝かせ、すっと歩いてきた。

「僕は、もう迷わない。どんな結果が待っているにしても、僕は、僕の力を出しきってみる」


さっきまでの桜からは想像もつかない自信に満ちた強い声だった。


博斗はまた、桜がいままでの桜と微妙に違うことを感じた。

今の桜の顔は、なにかを知った者の顔だ。


「博斗せんせ…。あの…ありがと」

桜はぼそっと言った。


「なにが?」

「なんでも」


ひかりが、にこやかに微笑みながら、桜の後ろから博斗を見た。

「博斗さん、怪人を倒しましょう。…こちらへ」


導かれるままに、博斗が奥の実験室に行くと、前にノートパソコンがあった場所に、懐中電灯が置いてあった。

「なんだ、それは?」


「これが、ウチワムーを変身なしで倒すための武器さ」

桜は博斗に、その、懐中電灯の出来損ないのような武器を放り投げた。


「今度のこれはホンモノだよ。マルスみたいなオモチャとは違う、ほんとのムーの武器なんだ。使用者のムーエネルギーを変換、マイナス400度の冷凍光線が、どんな敵でも完璧に冷凍するぞ。名づけて、超兵器『北極1号』!」

「俺には懐中電灯に取っ手がついただけにしか見えないぞ。ほんとにこんなのでいいのか?」


「大丈夫! 今日からの僕は、僕一人の力じゃないんだ。絶対に、大丈夫」

「科学に絶対はないんじゃないのか?」

「確かに、科学に絶対はない。でもいまの僕の言葉に、絶対に嘘はない」


「わかった。君に俺の人生、預けよう。使い方を教えてくれ」

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