9
スクールファイブの登場を見て取ったコピームーは、きしむ電灯から、弾みをつけて飛び降りた。
コピームーが着地した地面が、べこんと陥没する。
コピームーは自分の胴体をパカッと開き、何かを取り出した。
「くらえ、トナー目くらまし!」
コピームーの取り出したカートリッジから、黒い粉がふりまかれ、レッドは顔面にその直撃を受けた。
「きゃ! 前が…!」
視界を遮られたレッドは着地に失敗し、転倒した。
その上に、コピームーが素早く覆い被さる。
「うっ…な、なんて重い怪人!」
「あの怪人、間抜けですわね。あれでは自分も動けないでしょうに。しかたないですわ、わたくしが…」
「立体コピー!」
コピームーの体から、白い光が放たれ、目の眩んだイエローは一瞬たじろいだ。
イエローが目を再び開いたとき、イエローの前には、レッドが立っていた。
「あら、脱出できたんですの?」
レッドはイエローに答えず、返事の代わりに、突然手にリボンを出すとイエローを絡めとった。
リボンがうねり、イエローの体が、それに連れて宙に浮き、地面に叩き付けられた。
「う…ち、ちょっと、なんのご冗談ですの…」
「それはレッドのにせものです!」
素早く駆け寄ったブラックの一閃が、リボンを断ち切り、イエローを解放した。
「に、にせもの?」
見ると、確かに、レッドはいまだにコピームーに組み敷かれている。
「ふはははははっ、どうだ、俺様の力は! 俺様の手にかかればどんなものでもそのままコピーできるのだ!」
「なんですって! それじゃあ、このレッドもコピーなのですわね?」
「どうだ、味方は攻撃できまい!」
「ほほ、ほほほ、おーーーーっほほほほほっ! 生徒会長選挙で破れてより幾年月…ついに、ついに、わたくしの積年の恨みを晴らせる絶好のチャンスが到来しましたわ!」
半ば理性を失ったイエローは、目をらんらんと輝かせ、眼前のにせレッドに飛びかかった。
「ほほほーーーーっ、怨敵退散悪霊封印侃侃諤諤諸行無常!」
イエローは、これでもかこれでもかとにせレッドをぶちのめしている。
「あちゃ~」
レッドは、目を覆いたい気分であった。
自分ではないとわかってはいても、自分と同じ格好をしたにせレッドがこてんぱんにされるのを見ると、イエローを応援すべきか、にせレッドを応援すべきか、迷ってしまう。
「お前、ひどい仲間をもったな」
なぜかコピームーが同情の言葉を寄せた。
「ほっといてよ」
「ふん、一人ぐらいやられたって構うものか、いくぜ、コピー連写!」
コピームーの体から再び白い光が溢れる。
「させません!」
いつのまにか、影のようにコピームーの背後に忍び寄っていたブラックが、刀を一直線に突き刺した。
「おおっ?」
コピームーはうめいた。白光はぴたりと止まり、代わりにうぃんうぃんというきしむ音がして、コピームーの前面の液晶パネルに文字が出た。
ブラックがその文字を読んでやった。
「紙詰まりです」
「らいだぁ、きいぃぃぃぃっく!」
続けてブルーが、ブラックが突き立てた刀の柄めがけてキックをお見舞いした。
「ほげぇぇぇぇぇっ!」
コピームーの原稿カバーが吹き飛び、ガラス面が音を立てて砕け散った。
かあっと白い光が辺りに広がっていく。
光がやんだとき、すでにコピームーの姿はなかった。
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