第四話「出番が来た」 騒音怪人マイクムー登場
第四話「出番が来た」 1
授業を終えた博斗は、教員室に戻るべく階段を降りていた。
「あ、博斗せんせ、いいところで会った」
「おう、桜君。なんだ、まだ計算が合わないのか?」
桜は昨年度の生徒会会計の決算をしているのだが、まだ一向に片がつく様子がなく、このところ授業時間以外はほとんどどこかの部室に飛び回っているようである。
「ちょっと、僕の部活が多すぎて…領収書がまだ整理しきれてないんだ」
「そりゃあ自業自得じゃないのか? とにかく、あと一週間なんだから、急いでやってくれよ。顧問会議でなんとか説明しとくから」
「はいはい。感謝してるよ、せんせ。じゃ、また後で」
桜と別れた博斗は、教員室に戻った。すると博斗の机の脇に、翠が立っている。
「あ、先生。お待ちしてましたですわ。議題の最終確認なのですけれど…」
「えーと、この間決めた奴だろ? あのままでいいよ。どっちみち、もう教員会議に報告しちまったし」
「あら、どうもありがとうございますですわ。それではわたくし、生徒会室に戻りますから」
「はいよ。ご苦労さん」
翠は教員室を出ていった。
続けて博斗が理事長室に入ると、いつものように、理事長布施快治は椅子ごとぐるりと振り向いた。
「ご苦労。瀬谷君」
「理事長、ムーの動きは?」
博斗はせかせかと聞いた。どうも、博斗はこの理事長が苦手である。さっさと話を済ませてしまいたい。
「このところ、ムーの仕業らしきことは何も聞いていないよ」
「そうですか。奴ら、しばらく、姿を見せませんね。怖じ気づいたんでしょうか」
「君は、そう思うのかね?」
「いえ。むしろ、嵐の前の静けさじゃないですかね…」
「君の言っていた、シータという幹部。随分と我々の事を知っているようだしな」
博斗は腕を組んだ。
山葵園での一件以来、シータの存在は博斗の頭の中にちらちらと現われていた。
あの女は、むやみに攻撃をしてくるタイプではない。…博斗や生徒会の隙につけこんでくるに違いない。
「こう音沙汰がないと、逆に気になるんですよ。特に、今週は…彼女たちも生徒会のほうで忙しいわけですし…」
「うむ。生徒総会はなんとしても成功させねばならん。生徒自治はこの学園の校風に関わる大切な問題だ。生徒総会の失敗は許されない」
「こういうときにムーが攻めてこないことを祈ってますよ」
そう、生徒総会まで、あと一週間なのだ。
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