12

戦闘員達がざわめいた。ものすごい勢いで何かがこっちに向かってくるのだ。

シータが無言で立ちあがった。ワサビムーがその横に並ぶ。


数秒して、弾丸のような勢いで五つの影が飛び出してきた。

「キャップぅぅぅ! ご無事でしたか?」

レッドが博斗の首筋に飛びついた。

次いで、そのレッドを戦闘員のほうに突き飛ばして、イエローが博斗の手をつかむ。

「キャップ、お救いに参りましたわ」

「あ、ああ。…ど、どうも」


イエローの手で縄を解かれた博斗は、スクールファイブの戦いを見ているシータとワサビムーを呼ばわった。

「シータ! 望み通りスクールファイブが現われたぜ。どうするんだ?」


「スクールファイブの正体には確信を持った。私の推測通りだ」

シータはそう言い、軽やかにジャンプし、滝の上に飛び上がった。


「ワサビムー、奴等を食い止めろ。頼んだぞ」

シータはそう言い残すと、身を翻し姿を消してしまった。


指示を受けたワサビムーは、のっそり動き始める。

「アネさん、任せといてくれや。たとえ俺がすりおろされることになろうとも、出来るだけの事はやってやるぜ」


「キャップ、下がったほうがいいよ。あとは僕たちの仕事だ」

グリーンが博斗に声をかけた。


博斗は無言で頷くと彼女たちの後ろに下がった。

すでに、博斗があれやこれやと指示をするまでもなく、彼女たちは自ら何を成すべきかを判断できるようになりつつある。


「大丈夫ですよ」

博斗の後ろから耳慣れた声が聞こえた。

博斗は振り向き、やや汗が光るひかりの姿を認めた。


「ひかりさん、無事だったんですね!」

「ええ。キャップのおかげですよ。博斗さんは私達のために命を賭けてくださる方です。あの子達もそれが分かっているから、自分達で考えて、キャップのために誠心誠意、頑張っていますよ。…みんな、キャップの事が好きなんです」


「…そ、そんなことないって」

博斗は柄にもなく赤面すると、戦いに目をむけた。

ひかりは優しい笑顔を浮かべて、そんな博斗の横顔を眺めていた。


戦いのほうは、あっけなく大勢が決まった。


ワサビムーはワサビ爆弾やらワサビ目潰しやらを飛ばして奮闘したものの、次第に消耗し、動きが緩慢になっていた。


いっぽう五人はテンポよくワサビムーに攻撃を仕掛けた。

そしてついに膝をついたワサビムーに対し、スクールファイブの必殺光線が炸裂した。

「スクールウェーブっ!」


「うぉぉぉぉっ!」

ワサビムーは絶叫し、爆発した。


「見てください、博斗先生。…水が、清らかな流れに戻っていきます」

と由布。


そう、山葵園は守られたのだ。今度こそ、彼女たちをゆっくりと休ませてやることが出来る。

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