「…まったく、使えないオヤジだな」

「どうでした?」

ひかりが覗きこむ。

「駄目だ。よくわからん」


…それに、ひかりさんのことも。そう博斗は言おうかと思ったが、なんとなくためらった。

ムーの血が騒いだというのだろうか。いまはまだ、ひかりのことをあれこれ詮索するときではない、そう直感したのだ。


「ま、要は、気をつけたほうがいいのは燕だけなんだろ?」

「ええ、そうなりますね」

「んなら、そのうちなんとかなるって」

「ふふ。博斗さんらしいお答えで」

ひかりは微笑んだ。

そんな、ほんわりとした気楽さのなかで、博斗がぐっと背伸びした瞬間だった。


鋭い警報音が司令室に響き渡った。

「コンピューター教室に、未確認物体!」

モニターが切り替わり、コンピューター教室の全景を映し出した。


部屋の中央部に、前に見たあのムーの巨漢が立っている。周囲にはけばけばしい戦闘員。


そして、博斗達の見る間に、教卓にあるサーバーコンピューターがひとりでに動き出したかと思うと、その筐体からにょきにょきと手足が生えた。

「怪人か!」


「キャップ!」

ひかりの博斗への呼称が変わった。臨戦態勢だ。


博斗は全校への放送回線を開いた。

「緊急連絡、緊急連絡! 生徒会役員たちは、ただちに顧問の元に集合せよ! 繰り返す…!」

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