それから一時間ほどの雑務を経て、生徒会の仕事を済ませた一同は帰宅の途についた。


翠は迎えのリムジンに乗って悠々と帰宅。

燕はスポーツサイクルをシャコシャコとこぎ、あっという間に見えなくなった。

由布は、学園近くのバス停から、駅と反対方向へバス帰宅。

桜は生徒会室を出ると、腕章の改良に取り組むため、再び実験室にいってしまった。


というわけで遥は、稲穂と駅まで歩くことになった。

稲穂は、結局そのまま生徒会室にいて、遥達の仕事ぶりを眺め、しきりに感心していたのだ。


「生徒会って、いろんな仕事してるんですね」

稲穂が、並んで歩いている遥に話しかけてきた。

「遥さんと翠さんって、あんなに喧嘩してたのに、仕事のときは息が合ってましたよ」

「それは何かの間違いじゃない? あたし、翠のこと苦手だもん」

「そうですか? あ、そうだ、遥さん」

「なあに?」


「スクールファイブって、ほんとうにいるんですか?」

「え? どうして?」

「陽光アワーズの記事を考えてるんです。生徒会のことか、スクールファイブのことを書きたいなって、思うんですけど…」

…どっちもあたし達のことだけどね。遥は心の中で舌を出した。


「ま、そのうち会えるんじゃない? また怪人が出てくればの話だけど」

「怪人…ですか…」


そうこうするうちに、二人は陽光中央駅に着いた。

陽光中央駅は、陽光市を通って都心をめぐる陽鉄環状線と、環状線と郊外とを結ぶ陽鉄陽光本線の合流する、わりと大きな規模のターミナル駅だ。

駅前にはファッションビルが立ち並び、住宅地へのバスが次々と流れ込んでくる。


「あたし、環状線。稲穂は?」

「えーと、あの、本線の下りです」

「そっか。じゃあ、ここまでだね。ばいばい、また明日!」

「はい。さよなら、遥さん。…今日は、ほんとうに色々ありがとうございました」


「いいって、いいって。じゃあね~」

遥は手を振ると、階段を駆け上がった。


稲穂は、そんな遥の後ろ姿をずっと見つめていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る