スクールファイブ ~ディレクターズカット版~

お竜

第一話「生徒会出撃せよ」 毒虫怪人ケムシムー登場

第一話「生徒会出撃せよ」 1

それは、瀬谷博斗(せやはくと)が陽光学園に新任してから、ほぼ一年が経ち、二年目に入ろうかという、そんな、ある春のうららかな日のこと。


「入りたまえ」

博斗のノックの音に応え、低い声が響いた。博斗は理事長に呼び出しを受けたのだ。


理事長は布施快治(ふせかいじ)という。


「理事長、用件とは?」

博斗は単刀直入に尋ねた。どうせロクなことじゃないに決まってる。


「まあ、そう急ぐな。ひとまずかけたまえ」

「はあ」

博斗は露骨に嫌な顔をしてソファに腰を沈めた。長期戦か?


「酒々井(しすい)君。瀬谷君に例のものを」

理事長はそういって、部屋の隅のほうに声をかけた。


このときになって博斗は初めて気づいた。

理事長室の隅のサイドボードに寄り添うように美女がたっている。

その白衣の美女は、何やら小さな箱を持って博斗の前に立った。


「博斗先生。いえ、キャップとお呼びしたほうがいいのかしら?」

「キャップ? 蓋ですか?」

「いいえ、違いますよ。隊長という意味でです」

「隊長?」

「これを受け取ってください。説明はそれからにしましょう」


彼女は箱の蓋を開けた。なかには、五本の腕章が入っている。

それぞれ、赤・黄・黒・青・緑の一色ずつで色分けされ、中央部に、陽光学園の校章が刺繍されていた。

「なんです、これ?」


「その腕章を、生徒会の諸君に渡してほしいのだ」

「生徒会?」


「これも渡そうか?」

理事長は白い封筒を出した。

博斗はとてつもなく嫌な予感がしつつも、封筒を受け取り封を切ってみた。


「辞令。瀬谷博斗、生徒会顧問を任ずる」

「そういうことだ、瀬谷君」


博斗はあ然とした。

「俺に生徒会顧問がつとまるとは思えません。辞退します」

「そんなことはない。私は全教師のこれまで一年間の生徒指導をしっかりと観察して来た」


「博斗先生、私からもお願いします」

「へ?」

白衣の女性が博斗に歩み寄った。


「私、生徒会副顧問になりました酒々井ひかりといいます。ぜひ、博斗先生と御仕事がしたかったのですけれど…いけませんか?」


博斗は突然立ち上がると、ひかりの両手を握り締めた。

「理事長、喜んで生徒会顧問、やらせていただきますっ」

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