第3話「断続する降雨」
五年前、ハクタが
太陽の勢いが強すぎてあらゆる物が
原因はミカが生まれる五年前に太陽と月の
人間ならば魂と肉体の間に精神が連結の
しかし死亡するほどの損傷を受ける前に空気中に分散する精霊を集めて回復するので、
それでも生命の
太陽と月の聖獣は
だが死亡したという
そして空いた聖獣の地位には別の精霊と魂が選ばれ、担当分野に関するあらゆる決まり事を統治する決まりとなっている。
本来なら聖獣は
それでも人間
しかし天の二大精霊の頭となるだけあって、選ばれるのも時間がかかった末に聖獣の地位が空白なまま、十五年という月日が
聖獣の地位が空白では担当分野で問題が起きた際、精霊や妖精すら異常事態に対処することができない。
国殺しと呼ばれた病の時のように聖獣の力を借りられない。それが五年前の大干ばつ。
ユルザック王国では太陽の
そのため王国を統治する王と子息達大勢で神殿へと参拝することになり、ハクタはフィル
フィル、正式
フィルは第四王子なので王位
その温和な
ハクタは国殺しという病が流行した際に両親を失い、病による国からの保証を受ける
下町生まれのハクタにとって、王族など雲の上の存在である。無視して帰ろうとしたのだが、フィルに
そのまま泣きそうなくらいに頬を赤く
そうすると背を向けることもできず、フィルの話に付き合う羽目になり、
二年間は下町の住人として
少なくとも下町の住民のまま王族と友好関係にある、というよりは
そして幼いミカが大泣きすればハクタが呼ばれ、フィルが
太陽の神殿への参拝で三年勤めのハクタが王子二人の警護となったのも成り行きのような、フィルが
十
太陽の光を
もちろん兄であるフィルも注意していたのだが、干ばつによる神殿内の混乱や王族来訪による
ありとあらゆる
その
迷路のような構造の神殿とはいえ子供の足では遠くまで行かないだろうとハクタは考えて、最初は軽い気持ちで消えたミカを探した。
しかし一時間、二時間、と時間が経過する中で一向に見つからない。その内にフィルだけでなく騎士団や神官まで総動員しての神殿内
半日かかってミカが発見されたのは神殿の
真上に太陽が来ると部屋の中央に座する
水晶はかつて太陽の聖獣が神殿が作られた際に
その台座の足元で
だがミカはまだ幼い子供であったのと、王族が来たからと言って聖獣の間への
またミカが見つかった直後に新たな太陽の聖獣が神殿にお告げを残した。
干ばつの原因となった太陽の力を弱め、水の聖獣の力を借りて雨を降らすと約束した。
王国の水不足が解消される。国王が参拝した功績による解決から、国民支持が高まる期待感で神殿内は
国王も長く神殿にいるのは不必要とわかり、
しかしミカは発見されてから王都にある城に帰ってからの三日後まで、目を覚まさなかった。
医者に見せてもどこも異常なしと言われ、太陽の神殿で倒れたことから
フィルとハクタが他に手はないのかと
最初はそれだけで二人は喜んだ。だがミカは以前のような笑顔や泣き顔を見せず、無感情の
五年間、そんなミカをハクタは守り続けてきた。いつか
ミカの第五王子という地位は、王位継承権がなくとも王族の中では高い。そして今のミカは自分で判断できるか
今はまだハクタだけでも守り切れているが、いつ
ついでにミカに好意どころが
月が弱々しい光を放っていたが、深夜に出てきた雨雲によって
星すらも身を
明かりもない暗い部屋の中で金色の瞳が
ミカは静かに起き上がってハクタを目覚めさせないように足音を消して
雨は少しずつ量を多くしていき、
しかしミカの目にはもっと別な物が視えていた。ハクタには絶対視えない。ヤーですら
一番
なにせ
しかし悲鳴を上げなかったのは
ミカが廊下に立っているのもそうだったが、なによりもミカが視線を向けている方角、窓硝子の向こう側に広がる森。ほんのかすかにヤーはなにかが視えた気がしたのだ。
精霊、に似ていたが少し異質な存在を目の
答えどころが反応すら返ってこないとは思ったがヤーはミカに問いかけた。
「何が視えるの?」
問いかけに答えるようにミカはヤーの方を
今まで見たことないミカの
そしてミカが口を開きかけた矢先、階段から姿を現したマリは片手に持った
そばかす顔に三つ編みにしていたせいか少しうねりを見せた赤毛。
「あのー。雷雨が酷いですけど、うるさくて
「あ、
ヤーは心配をかけまいと小声ながらも明るい声でマリに話しかける。マリは
今までほぼ動きを見せなかったミカを思えば、これも初めて見る姿だ。まるでなにかに
もしかして雷が
穏やかになりつつある外に
精霊は空気中に散布する元素のようなもので、妖精や聖獣のように魂や意志は持たない。しかし磁石に砂鉄が引き寄せられるに近い、特有の現象を起こすことがある。
強い魂に
ミカの周囲に
土、と。
月が輝きだした時、ミカはいつも通りの生気のない瞳で立ち上がり、静かな足取りで宿屋の客室に戻った。
ヤーはいくつかの思案を重ねつつ、最初の目的を思い出して小走りでお手洗いに向かう。
すっきりして
深夜とはいえ朝が来るまで少し時間がかかりそうな気配を感じ取りながら、ヤーは
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