philosopher
アカイレイ
第1話 admission
僕はレイ、アカイレイ。十五歳の少年だ。今年から学府に入学することになった。ここ、学府は僕の住んでいる国の首都にある。昔あった大学っていう所に近いらしい。ここでは老若男女・人種を問わず、様々な人が本当に様々な事を学んでいる。仕事として研究に勤しむ者もいれば、講義の形や徒弟の形を取って何らかの知識・技術の習得に励む者もいる。座学に依る学問ばかりではなく、フィールドワークが伴う事もあるし、中には武道なんてものもある。なぜこんなにも学徒が多いかと言えば、それは人類が単純な労働から解放されたからだ。五十年前、ある企業がかつての大学と共同開発したという「ゴレーム」は、人間の労働を代替するようになった。人に近い運動自由度を持ち、柔軟な動作が可能なそれは、人間の動きを再現する事ができた。プラットフォームが公開され、オープンソースとなった事で、それは爆発的に普及した。これ以降、世界各地で労働力のゴレームへの置き換えが進んだ。そうして僕が生まれる頃には人間の仕事は学問と恋愛くらいしか残っていない世の中になっていた。
さて、僕が学府に入る理由を述べておこう。ごく単純だ。それは哲学者になりたいからだ。哲学者。知恵の探求者。考える者。賢人。かつてアリストテレスやプラトン、ピタゴラス、そしてソクラテスなど偉大な哲学者が数多く存在した。そして彼らは数学や工学、心理学など、後に枝分かれする複数の分野に秀でていた。僕は学問の源流は哲学だと思っている。そして哲学を学ぶと言えば、全ての学問を学べると思っている。文明が発達し、魔法と区別がつかないくらいになった領域もある現代において、どれか一つの分野を学ぶだけでは社会でやっていく上で足りないのだ。分野横断的に学ぶ必要がある、というのが僕の考えだ。そして一見すると全く関係ないような分野同士が繋がりを持っていたりする。点でしかなかったものが線になるのだ。
去年までで数学や英語、科学や語学そして歴史などは一通り学んでおり、基礎は出来ている。これから学府でより実践的な知識の習得に励むのだ。ここ、学府では基本的には授業が無い。もし必要ならその都度、教員に講義を頼む事になっている。僕は差し当たって機械工学を学んでみたいと思っている。え?哲学じゃないの?って思うかも知れない。だが僕には造りたいモノがあるのだ。それは自分専用の「ゴレーム」あるいは専用の「パートナーロボット」だ。労働力としてのロボットが「ゴレーム」なら、「パートナーロボット」は伴侶だ。僕は伴侶を造る為に、哲学として真理を探求しつつ、ものづくりも学びたいと思っている。
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