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山島かげる
第1話 全ての始まり
今、壮絶な戦いが繰り広げられている。
広大な大地が戦場と化し、人間同士が争う。ある場所では魔法のぶつけ合い、またある場所では剣や弓などを使った殺し合い、一人一人が得意とするスキルが駆使されたかなりレベルの高い戦いだ。
「またか。」
誰一人として聞くことはない、この戦争の全てを視ている何かが言う。
「・・・幾度目だろうか。なぜ、滅ぶのか、人間は。しかも、人間同士によって。」
人の手によって開発された世界をも滅ぼしかねない魔法兵器、それを我が物にしようと始まった戦争。いくつもの国々や、団体が参加している。
そして、この戦争も終わりを告げようとしていた。戦争の終わりイコール世界の終わりなのだが・・・。
魔法兵器は、とある国の首都にある地下に建設された魔法科学研究施設にて保管されていた。そこに辿り着いた一人の女性。
「これね・・・!こんなもののせいで、ひどい争いが起こってしまう!・・・それに」
ここに来るまで大変だったのだろう、ボロボロな格好の女性が魔法兵器を目にし、静かに怒った口調で言う。「絶対に滅亡なんかさせない!私がこれを、破壊する!」
女性は腰に差していた剣を抜き、両手で剣を構え魔力を込める。剣はまばゆい光を発し、女性は剣を振りかざそうとした瞬間、遅れて辿り着いた何者かに阻まれてしまった。
「・・・!!」
女性は阻まれた時、その人物を目にして大きく目を見開いた。
「あなたは・・・どうして・・・!」
女性は本当に悔しそうに涙を流しその場に膝をつき、倒れてしまった。
「先ほど込めた魔力で全ての力を使い果たしてしまいましたか。ですが、これで邪魔する者はいませんね・・・。」
現れた人物は男性で、彼もまたひどくボロボロの格好をしていた。
「私は、全てを壊す者!この世界もろとも、何もかもを破壊する!」
男性はそう叫び、魔法兵器へ近づいていく。
「ごめん・・・ごめんね、みんな・・・守れなかった・・・」
そう口にし、女性の涙は止まることはなかった。
そして、世界は跡形もなく滅んだ————。
辺りには本当に何もなく、ただただ暗い闇が広がるだけ。
「私はこんなことを望んでいるわけではない。未来永劫、人間は限りになく、繁栄し続けてほしいだけ。それなのに・・・。」
全てを視てきた何かは言った。それに対して言葉を返す別の何か。
「またですか?いい加減に諦めてはどうですか?」
「・・・そうだな。私の力ももう底をついてきた、おそらく次が最後になるだろう。」
「しばらくお休みすれば回復するでしょう?力を使い切ってしまえば、再び活動できるようになるまで、かなりの時間を費やす必要があります。」
「いいんだ。私は疲れた。これを最後にして、私は消えてしまおうと思う。」
「・・・そうですか、わかりました。ただ、私はあなたを尊敬しています。そう簡単に消えてほしくはありません。ですので、もし、力を使い切って、消滅しきっていなければ、私はあなたを必ずお救いします。」
「ああ、構わない。・・・では、世界の再構築を行う。私は、今一度、全てを作る!」
暗闇の中で一つの小さな光が発生し、すぐに大きく広がっていく。
今ここに、新しい世界が作られる。
—————。
———。
ここは日本のとある町、ど田舎と言われるほど田舎でもないが、日本の中では田舎と言われる地方。雲ひとつない青空が広がる、ある日の朝。
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」
息を少し切らして坂を自転車で登っていく学生服を着た少年。
周りには一生懸命に自転車を漕いでいる人もいれば、自転車を押して複数人で歩いている人、また鞄を片手に徒歩の人、全員が同じ方向へ向けて進んでいく。
少年は歩いている生徒たちを追い越していき、坂の上に建つ学校へ向けて進んでいく。学校の正門へとたどり着き、そのまま自転車小屋の手前まで自転車を漕いだ後ブレーキをかけて自転車を押し始める。
「
「おはよ。」
陽と呼ばれる少年は、同じタイミングで登校してきたクラスメイトと挨拶をかわしながら自転車を駐輪する。そのまま鍵をかけ、鍵を学生服の上着のポケットにしまいながら、昇降口へ歩いて向かっていく。
昇降口で上履きに履き替え、陽の教室がある2階へ階段を使って登っていく。「2-2」の札がかけられた教室へ入り、挨拶をしてくれる人に挨拶を返しながら一番左前の机の横にあるフックに背負ってきたリュックをかけ着席する。チャイムが鳴るまであと10分程だったこともあり、昇降口から教室に来るまで多くの生徒が登校しておりガヤガヤと騒がしかった。
「陽、数学の宿題やってきたか?」
クラスメイトが陽に話しかけた。彼は中学の頃から仲が良く、1年生の頃も同じクラスだった
「もちろん。またやってこなかったのか?数学は1時限目だし、今日は見せないぞ?」
「え!?まじか、今日時間割変更されてたのか、5時限目だと思ってたわ。しゃあない、当てられないことを祈る!」
「ああ、俺も祈っておいてやるよ。」
「サンキュッ!」
そんな会話をし、友人は自分の席に戻っていった。
その後すぐに先生は教室に入ってきて、チャイムもなりすぐさま朝礼が始まった。陽が通う学校は公立の高校で偏差値は高くもないが低くもない専門高校だ。ここの高校は朝礼後に朝読書の時間が存在する。適当に家から持ってきてある小説を見ながら、今日は帰ったら何をしようかなと、陽は考えている。
陽は、生まれてから17年間ずっと同じ町で、ごくごく平凡に暮らしてきた。これからも多分、この町でずっと暮らしていく、このままこの町で進学して、この町で就職して、いつか結婚して、この町で平凡に過ごしていくんだと思っている。
今はまだ高校生で、やはり社会人とは違い、一日一日が違う毎日を楽しく充実に過ごせていると実感していた。
今日の学校でも座学の授業や体育で運動したり休憩時間には男女問わずそれなりに仲良く会話をしたりと、楽しく過ごした。
そんな陽は、17年間生きてきて、まさかあんな非日常的な経験をするなんて、この日まで思ってもいなかった。
「それじゃあ、みんな気をつけて帰れよ。部活のやつはとにかく励め。」
終礼が終わり、先生はそう言って教室を出ていった。
「陽、帰ろうぜ!」
一弥がリュックを背負いながらこちらへ歩いてきた。
「ああ。」
簡単な返事をして陽も鞄を持って肩にかけた。
「今日の数学、当てられなくてよかったぁ〜」
「そうだな。まぁ、当てられてもあの先生はお前が宿題やってないのわかるんじゃないか?」
「かもなぁ」
そんな他愛もないことを話しながら自転車小屋へ向かう。
その時、陽の頭に声が響いた。
”やっと見つけました。なぜこんなところにいらっしゃるのですか。”
「!?」
突然のことにその場で硬直してしまう。
一弥の声じゃないし、周りの人の声ってこともなさそうだし、さすがに気のせいだろう。陽はそう思った。
「どうした〜?」
数歩先のところで一弥が振り返ってこちらを見ていた。
「いや、なんでもない。・・・一弥、さっき何か聞こえなかったか?やっと見つけた、とか。」
陽は念のため一弥に確認してみたが、予想通りの答えが返ってきた。
「やっと見つけた?いや、聞こえてないけど、周りの誰かが言ったことがたまたまはっきり聞こえたとかじゃないか?」
「・・・だよな。」
陽は、やっぱり気のせいだな。と結局思った。
それから、頭に声が聞こえることはなかった。気のせいなのだからもし万が一にも起きることないと陽は思っていたが。
帰っている途中で、このことはすっかり忘れていた。帰宅後にはテレビを観たり、ご飯を食べたり、お風呂
入ったり、明日提出の宿題をしたりと、いつもと変わらないことをやっていた。
「じゃ、おやすみー」
寝る準備ができたところで、家族に寝る前の挨拶をし自室のベッドに入り込む。時間は午前0:00頃。いつもよりは早く寝られることに小さな喜びを感じながら、すぐに眠気に襲われ意識が遠のいていくのを感じた。
”なぜそちらの世界にいらっしゃるのですか!?早くこちらへおいでください!”
陽の体は眠っていたが、意識の中ではっきりとその声を聞いた。今日聞こえたような気がしたあの声だ。
一体なんなんだこれは、と陽は思いながらも意識はそのまま深く深くへと沈んでいった。
意識が覚醒してきた。目を閉じているが、目の前が明るいのがわかる。朝か、と陽は思ったが何かおかしい。窓は締め切られていた自室のベッドで寝たはずだが、心地よい風が吹き、チュンチュンと鳥の鳴き声が部屋の壁を隔てて聞こえるものと異なり、はっきりと聞こえる。どうやら外にいるようだ。
少し目を開けるとあまりに眩しいので、手で影を作りながら少しずつ目を開けていく。この明るさに目が慣れ始めた時に、この眩しさの正体は太陽であることがすぐに理解できた。
上体だけを起こし辺りを見回すと、知らない場所にいた。寝ていた場所は草原になっており、周りは木で囲まれている。どうやら、ここは森の中のようだ。
「まさか、夢か・・・」
とりあえず立ち上がりながら、ボソッと呟いてみた。すると、まさかその言葉に返答が来るとは思いもしなかった。
「夢ではありませんよ。間違いなく現実です。」
「!?!?」
かなり驚いた。誰もいないと思っていたら、背後に人が立っていたからだ。そういえば先ほど後ろは確認していなかった。
しかも、この声は昨日頭の中に響いてきたあの声だ。
非現実的なことって、もしかすると突然、当たり前のように起こったりするものなのかもしれない。
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