カタルシス

高岡 望

第0話 プロローグ

春風が吹き渡り、桜が満開に咲き乱れ、子供達が楽しそうに走り回る。

そんな綺麗な風景の中に、僕はいた。

そして彼女もそこにいた。

彼女と出会ったとき、忙しなく動き回る人達を横目に、どこか別の空間に迷い込んだように感じた。

彼女はいつも僕と目が合うたびに、優しく微笑んでくれた。

僕はそんな彼女が大好きだった。


でももう僕は彼女とは会えない。

それは僕が自ら選んだ道だから。


そして僕が彼女の為にしてあげられる唯一のことだから。


彼女が僕に初めて涙を見せたあの日、僕は彼女を守る為に、吸血鬼になった――。



吸血鬼。

それは、人と同じ容姿の人ならざる生き物。

吸血鬼は人間と同じように社会に溶け込み、見せかけ上の共存を続けていた。

そして吸血鬼は人間の血を飲まなければ死んでしまう体質を持っていた。


これは吸血鬼が人間社会で当たり前のように生きる世界の、血塗られた争いの物語。

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