自殺志望の僕と君の物語

僕と君の出会い。

「あ〜あ。あっ敦おはよう。」

階段から降りながらあくびをしているだらしない姉、白川 杏はそう言った。

「おはよ。杏。また夜更かしか?ダメだぞ、早く寝なきゃ。」

「あんたはうちの母親か!」

「・・・」

「・・・ごめん。」

「別にいーよ。・・・杏が悪いわけじゃないし。」

僕と杏の母親、白川 和代はつい先日、事故で他界している。悲しいとは思った。実際に葬式の時はたくさん泣いた。しかし、その後の日常生活は病んだり、不登校になったりせず、いつもの中学生活を送れた。

そして、中学卒業式が終わり、春休みに突入した。それが今日だ。

「・・・杏は今日はなんか用事あるのか?」

「え、ううん。何にもないよ。どうかしたの?」

「なら、僕の入学祝いしてくんね?」

これ、自分から言うの恥ずかしんだよな。自分から祝ってんくね?って。

「それ自分で言うの?」

杏はお腹を抱えながら笑いそう言った。

「・・・言われると思ったよ。でも祝ってくんねんだもん。あんな偏差値高いとこ受けて受かったのに。」

「そうか。うちの高校受けたんだよねぇ。そんなにお姉ちゃんと一緒がいいですかー?かわいい子でちゅねぇ。」

僕の頭を撫でながらそう言った。

途中で腹が立ち杏の手を避けて「そんなんじゃないし。」と、照れながらに言った。

「はいはい。そういうことにしておいてあげる。よし、お祝いかー」

何か、考えている。

お祝い何にしようか考えてくれてるのか。

「よし!なら、お寿司だー。特別にお姉ちゃんの奢りで!」

「やったね!たくさん食おっと。」


そのあと2人で寿司を食べ、杏の買い物に付き合ってから帰った。

「疲れたねー。」

当たり前だろ。ひとつ欲しいものがあるからと言って何店見せ回るんだよ。4店ぐらいは回ったぞ。

「誰かさんが全然欲しいもの見つけないからな。」

「だからごめんってー。」

「まぁいいけど。」

そうして春休み一日目は終わった。

翌朝、目を覚ますと机の上に手紙が置いてあった。

『急遽、旅行に行くことになりました!帰りは春休み明けになる!学校。慣れるんだよ?んじゃ行ってくるねー。 お姉ちゃんより。』

旅行って。無茶苦茶だ。しかも、学校始まってから帰ってくるって、大丈夫かよ。

そのあとは何もすることなく春休み最終日。

「もう、休み終わりかー。明日から学校なんだよなー。ま、頑張ろ。」



「当校の生徒であることの自覚を持ち秩序ある行動を心がけてくださいね。」校長先生。どこの学校もやっぱりいうこと似てるな。

そのまま入学式を終え、ホームルームに入った。

うわ。知らない奴ばっかだ。友達できないかもな。

そう考えていると、誰かにうしろからタックルされた。

「あっごめーん!大丈夫か?」

「あー大丈夫。」

「良かったー。俺は荒岸 貴之だ。」

ありがちな自己紹介だな。

「僕は白川 敦だ。よろしく。」

あっ僕もか。

「あー。よろしくな!」

荒岸貴之。友達になれそうな人いて良かった。


ガラガラガラ!

「席つけー。これ席表だから見ろ。」

あれ、僕1番前だ。最悪だ。

「おい。敦!隣じゃん。」

隣、荒岸だった。

「ほんとだ。すごいな。」

そんな話をしていると先生は、

「はい。号令!」

教室の空気が一気にシーンとなった。

「あっいないじゃん。んじゃ君。号令かけて。」

指さしているのは僕だった。

「まじですか、先生。」

「当たり前だろ。早く。」

「起立。礼。着席。」

聞いたことあるフレーズをなんとなくに棒読みでスムーズに喋った。

それからは先生がこれからの日程や、今後の行事などをみっちりと喋ってくれた。そして最後に学級委員を決めることになった。

選ばれたのは、『秋山 優』と『柿 加奈子』の2人だ。

こうして、高校生活一日目は幕を閉じた。・・・と思っていたがこの高校生活一日目が僕の、充実しそうな高校生活をぶっ壊した。


杏が死んだのだ。

旅行先からの帰りの途中、杏の乗っていた飛行機は何らかのトラブルを起こして、乗客をたくさん乗せたまま海に墜落したらしい。


そして、杏は遺体として、飛行機から見つかった。

その日の夜は眠れなかった。

ただただ泣いた。

杏のいない人生。

そんなのいらない。死にたい。

母親が死に、杏が死んだ。杏が。死んだ。

「そうか。僕も死ねば天国でまた暮らせる。そうだ死のう。そしたらまた。」『だめ。ダメだよ。敦。』

背中から、暖かい何かと杏の声を感じた。気のせいだと分かっている。杏は死んでいるのだ。死んだのだ。声が聞こえるはずがない。しかし、杏の声で死んだらだめと言われた。これがもし、杏の気持ちなら、僕はもう少し生きていた方がいいのだろうか。


「・・・おはよ。杏」杏の慰霊に挨拶をした。

杏が死んでから、1週間がたった。学校は1週間休み続けた。

「・・・杏。今日から学校に行くよ。んじゃ行ってくるね。」

心が痛い。いつもなら行ってらっしゃいと元気よく言ってくれるのに今日はその声が聞こえなかった。杏の慰霊に写っている杏はとても笑顔だ。

「もう、この笑顔もないんだよな。」

そう言い残して、家をあとにした。


「あ!敦!今日から登校か、何やってたんだよ。1週間も。」

「ちょっと家の用事がね。」

「そうか。なぁ敦。いつでも相談乗るからな。」

「・・・ありがと。」


「チョッープ!」

「痛!何すんだよ!」

いきなり僕の頭の上にチョップを食らわしたのは・・・誰だ。

「大丈夫ですか?」

「痛いよ。てか、君は誰さ。いきなり人の頭にチョップしないでくれるかな。」

少し怒り気味で言ってしまった。

大丈夫かな?

「私は、小山、小山 春です。あなたが暗い顔をしてたのでチョップしました。」


これが僕と彼女の出会いだった。

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