第117話 げえむくりあ

プライマリーコアの制圧は一瞬だった。

そもそも、主力が死の案内人デスナビゲーターの領域に集中していたし。


消化試合。

何時までこの世界に居られるのか分からないけど、今を大切にしたい。

ラスボスを倒した後の、達成感と寂しさと・・・


だが・・・


「これは・・・マナが枯渇しかけています・・・このままでは暴走しますね」


レインが困った様に言う。


「それは、神様が補充して下さるのでは?」


俺が尋ねると、神様が応える。


「正常稼働時に、稼動に必要なだけのマナなら補充出来る。じゃが、枯渇状態を回復させるのは、骨が折れるのじゃよ」


そこは骨を折れ。

疲れてもやって欲しいのだけど。


「何とかお願い出来ませんか?」


「さて・・・どうしようかのう・・・?」


クソジジイ。

適当に素材ぶち込んでも駄目なのかなあ・・・


「わふ・・・そもそも、乗っ取られたのも、故意にせよ、過失にせよ、神々の責任。此処は、何とかして欲しい」


ダリオが言うが、


「そうは言われてものう・・・?」


動かない神様。

うーむ・・・


レインは溜め息をつくと、


「ダリオ・・・貴方、勘違いしてるわ?勘違いしたい、のかも知れないけど。ご主人様も分かってないですね」


困った様に言う。


「わふ・・・?」


「神様は仰ったでしょう・・・?骨が折れる、と。骨が折れる程マナを絞り出しても回復出来るか怪しい、という意味よ。システムを乗っ取られたのもわざとじゃないし、私達に任せたのも自分達じゃ解決出来ないからよ」


本気で困ってた。


「そもそも、システムの開発、運営は、元々、前運営陣がやってましたからね。全員更迭され、不慣れなメンバーで何とかまわしている状況。想定外のトラブルだったのよ」


「・・・前運営引っ張ってくれば良いんじゃないか?」


「女神の映し身まで作って侍らせ、酒池肉林。運営は放棄。流石にちょっと処罰しないと、という話になったそうです。出したら逃げるから駄目ですね」


そんな事してたのかあ。


レインは微笑むと、


「大丈夫ですよ、人間界は私が護ります。私ならこのマナ、補充出来ますから」


軽く口づけしてくる。

流石レイン、宜しく頼むよ。


「ちょ、レイン、まさか」


ダリオが慌てる。

え?


ジッ


俺から離れたレイン身体が、光始める・・・え・・・?


「おい・・・レイン・・・?」


「ご主人様・・・ご主人様に頂いた時間、本当に楽しかったです。ご主人様・・・大好きです」


待て・・・まさか・・・


「私は元々、ガチャを引く為のマナから作られています。マナへの変換は効率が良い。ご主人様に育てて頂いたお蔭で、かなりの存在力が有ります。世界を救ってお釣りが来るくらいです」


「レイン・・・駄目だ、レイン!」


レインは微笑むと、


「ご主人様・・・ばいばい」


レインが光に・・・変わる・・・光が溢れ・・・


そこには、満タンまでチャージされた、マナプールのみが残った。


「そんな・・・」


俺はその場で膝をつく。


「わふ・・・ご主人様・・・ご主人様は間もなくこの世界より離れられます。そうなれば、私達とは会えません・・・それが少し早くなっただけ、です」


ダリオが、何かを堪えつつ、言う。


他のみんなも・・・悲しそうな顔だ。

別れ・・・でも・・・会えなくても・・・消えるのは・・・


「・・・ファンド君、済まない・・・だが、そこの魔司書の言うとおりなのだよ。君のユニットは力をつけ過ぎた。このまま君がこの世界に留まると、またマナが枯渇してしまう。君はゲームをクリアし、ユニット達は虚空間に帰って貰う必要がある」


そっか・・・俺の我儘で世界を危機にさらす訳にはいかない。

レインが護ってくれたあの世界を。


「ご主人様・・・最後に可愛がって頂く・・・訳にはいきません。レインが出来なかった事ですから」


ライが悲しそうに言う。

そうだな。


「みんな・・・元気でな。本当に楽しかったよ」


「ぽふ・・・美味しかったし、楽しかった。ありがとうです!」


パナケア。


「ご主人様、お身体に気をつけて下さい。可能であればお側にお仕えしたいのですが・・・」


ユグド。


「ご主人様、本当に楽しかったわ。ついて行きたいけど・・・レインですら我慢したのですもの。だから、諦めざるを得ませんわ」


ライ。


「ぴきぃ、クリーピーは遊びに行くのよ!」


クリーピー。

・・・可能なの?


「わふ・・・復讐しか頭に無かった私の心を溶かしてくれたのは、ご主人様・・・有難う。可能ならついて行きたいけど・・・レインにも申し訳無いし、理論上不可能なのも分かっている。・・・でも、ご主人様ならきっとすぐに、神が呼び出すと思う。その時まで・・・待つ」


ダリオ。

再召喚・・・有るのだろうか。

もっとみんなといたい。

またみんなに会いたい。

・・・レインにも。


今は・・・


「みんな、さようなら」


ステータスに4つ目のスキルが増えている。


「げえむくりあ」


視界が・・・光に包まれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る