第123話 バカップルによる使い方
そして。
最初は偶然だった未来さんの瞬間移動。
僕が復活するまでには何とか部屋内は移動出来る程度になった。
「よし、これで瞬間移動魔法は出来たわ!」
「私も知識魔法の方向性は理解」
「そんなに簡単に成果があるものなのか」
だったらそのゼリー、とんでもなく有用じゃないか。
「魔法使いは元々魔力を持っているの。その魔力をどう使うかによって色々魔法の効果が変わる。だからゼリーで使えた時の感覚をある程度維持出来れば。ゼリーの効力がなくなってもその魔法が使える訳」
「未来は元々時空間魔法のうち、加速魔法が使えた。だから適性はあったしマスターするのは楽」
なるほど。
「なら僕のような普通の人間が魔法を使うには。魔力はどうすればいいんだろう」
「難しい」
理彩さんはそう言って説明する。
「本来、魔法使いと普通の人間の間には違いは無い。だから普通の人間でも魔力を蓄積したり放出したりする事は出来る筈だ。理論的には」
理論的には、という事は。
「つまり今のところそうする手段は無い、と」
「強いて言えば魔法薬の魔法濃度を濃くして量を増やせば、その分の魔法は使える筈だ。その方法で秋良はある程度魔法を使っている模様。でも自力で魔力を蓄積する方法は思いつかない。聞いた事も今のところ無い」
そうか。
一瞬魔法を使えるようになったと思ったのだけれど。
まさに一瞬だけのようだ。
「でも大丈夫。正樹が魔法が必要な時は私か理彩が何とかするから」
「いやさ、さっきの知識魔法、使えればテストの時に便利かなと」
ついつい本音を言ってしまう。
「確かに」
納得した理彩さんと。
「それはちょっと無理ね」
そう言う未来さん。
そんなところに。
「ただいまー」
楓さんと栗平が帰ってきた。
やっぱり風呂だった模様だ。
濡れたタオルと着替えを持っている。
「随分長い風呂だったな」
「真面目にマッサージしたりストレッチしたりしたからさ。風呂が広いと色々出来る。湯船で身体を温めて伸ばしたりも出来るしさ」
本当に真面目にマッサージとかストレッチとかをやっていたらしい。
ただその光景を想像するととんでもないけれど。
「何か面白いものを食べているな。開発部の新作かい」
「らしいわ。魔力適性を調べる為のゼリーだって。色々な系統の魔力をゼリーに浸透させているみたい」
「なるほどな」
楓さんはゼリーと説明書を交互に見る。
「僕は大抵の魔法はそこそこ使えるからなあ。あまりこのゼリーのお世話になる必要は無いけれど。ちょっと2つ程貰っていいか」
「ええ、どうぞ」
「なら」
楓さんは水色のゼリーを2つ取った。
あれは心理系統だな。
「颯人、ちょっとこれ2個食べてみてくれ」
「おいよ」
栗平は全く何も考えない感じで2個ともさっと食べる。
「そして、魔力分与の魔法と。さて颯人、僕を見てくれ。わかるか」
何をする気だろう。
ちょっと考えて気づく。
これは、ひょっとして。
栗平は頷いた。
「理解した。これが楓の見ている世界か」
「その一部だな。正確にはそれに知識魔法と未来予知魔法がおまけするんだが。どうだ、面倒くさいけれど、悪い世界じゃ無いだろ」
栗平は苦笑している。
いや、照れているのか。
「面倒くさいけれど悪くないか。楓そのものだな、その表現」
「何分その視界で育ったものでさ。どうだ、感想は」
「感想も何も楓の事は記憶まで共有しているからなあ。楓だなあとしか思わないな」
「折角魔法で見た感想がそれかよ。面白く無いな。あと他の人も見てみようとは思わないのか」
「それは今回は遠慮しておくわ。俺は楓が見えればそれで充分だ」
「こいつめ」
お、なかなかバカップルなことをやり合っている。
「どうする。こっちも同じ事をやってみるか」
理彩さんがそんな事を。
「やめとく。本物のバカップルには勝てない」
「だな」
理彩さんは頷いた。
「そろそろ昼食に行こうか」
「どうぞ。こっちは颯人の魔法が一段落したら行く。
僕らは立ち上がって、部屋を出る。
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