第45話 今度はパイプを調達しました

「銅線を一度切って、つなぎ直すなんて魔法とかは無いですよね」

 念の為に3人に聞いてみる。


「金属なら可能。物質加工は私の得意魔法」

 と杏さん。

 おお、聞いてみるものだ。


「ならこの針金を12メートルに切りましょう」

「その長さの根拠は」


「木材の場合、杖の長さが比重に反比例していると言ったじゃないですか。その関係が金属でも通用すると仮定した場合の、最適な杖の長さです。

 樫の杖の長さが987ミリ、比重が0.83。

 銅の比重は8.96なので、計算値だと1065.5ミリの長さになります。

 余裕を持って12メートルから試験しようかと思いまして」


 実はもっと色々考えているのだけれども。

 これはまず第1段階だ。


 1年生3人で協力し、だいたい12メートルちょいの処でカットする。

 ちなみにカットは杏さんの魔法だ。

 物質加工魔法、工作物を扱うにはなかなか便利でいい。


「それではこの針金を徐々に短く切っていって試せばいいんだな」

「ええ、それでお願いします」


 杏さんは理解した様子だ。

「よし、なら試してみよう」

 杏さんは銅線をカットしながら前に歩き始める。


 そして。

 理彩さんが僕をつんつんつつく。

「後で説明」

「わかった」

 教科書でも見れば書いてあるだろう。


 杏さんは目を瞑って、ゆっくりと歩いていく。

 そして身長分くらい戻ったところで。

「ここだ。確かにこの長さで杖と同じ反応になる」

 という事で、取り敢えず基本の長さはわかった。


「あとはこれにコイルとバリコン代わりのものをつけて調整できるようにすれば完成です。コイルは巻くだけ、バリコンは平行版もどきでいいでしょう。こんな感じで作って貰えませんか」


 イラストもどきを描いて説明。あっさり物質加工魔法で作ってもらい接続する。


「さて、この長さの銅線が杖と同じ反応を示す事はわかった。でもこの長さだと杖としては使えないぞ」

「そんな訳で、そろそろ会長が戻ってくればいいのですか」


「呼んだか」

 おい!

 いきなり背後に出てこないでくれ。

 寿命が縮む。


「折角ご注文通りのものを探してきたのにその反応は無いだろう」

「脅かすような出方はしないで下さい」

「これも愛故なのだよ」

 関係ないだろう。


「そんな訳で探し出してきてやったぞ。細いサイズの塩ビパイプ。ちょっとしなるがまあ大丈夫だろ」


 なるほど。

 こういう物があったか。。

 とりあえず感謝はするべきだろう。


「会長ありがとうございます。確かに条件通りです」

「よし、正樹の貞操ゲットまで残りあと1つだな」

 おいおい。


「それとこれとは話が別ですけれど」

「うまく行ったら熨斗つけて進呈しよう」

 第3者のとんでもない台詞。

 この声は千歳さんだ。

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