第44話 有能で便利で煩くて面倒な存在
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」
出た、煩くて面倒くさいの!
未来さんがげっ、という顔で半ば腰を浮かせかけているのがわかる。
杏さんも半歩退いて左腕をブロック風にあげている。
でも理彩さんは、
「会長、頼みがある。材料が足りない」
とノーリアクションで告げた。
「了解なのですよ。何か進捗があったのですか」
「まだわからない。でも正樹が何か思いついた」
「わかりましたのです」
会長は僕の方を向き直る。
そしてにやりと笑って、
「願いは何じゃ、3つまで言うがよい」
声色を変えてそんな事を言った。
更に。
「おぬしの貞操と引き換えにその願い、叶えてくれようぞ」
なんてぬかしやがる。
「じゃあいいです」
「うーん、いけずう-」
まあこの辺のやりとりはお約束だ。
「貞操は別として、学校内か近隣で調達出来る物なら話に乗るぞ」
やっと本題に入る。
「欲しいのは銅線。素材が銅であれば被覆はあっても無くても構わない。。最低12メートル以上でできる限り太いの、ただし持ち歩ける範囲で。
あとプラスチック素材など人工素材の1メートルちょっとの長さの棒。振り回せる程度の強度があるもの」
「了解なのです。それでは行ってくるですよ」
すっと会長は姿を消した。
何だったんだ今のは。
ただ未来さんは今の色々な状況がわかった模様だ。
微妙に呆れた顔をしている。
「まさか足りない物があるからって、会長を呼び出すとは思わなかったな」
一方理彩さんは当然のように言う。
「必要資材等があれば出来る限り用意すると言った。だから今こそ必要だと思って呼んだ」
つまり会長をパシリに使ったと。
理彩さん、なかなか度胸があるなと思って。
そして気づく。
度胸があるんじゃ無い。
人付き合いの常識とかそういうのがいわゆる普通と違うんだ。
僕に裸に興味あるかと聞いてきたのもそう。
判断の基準が色々人と違う。
そしてどっちかというと正しいのは。
僕には想像出来ないけれど理彩さんの方なのだろう。
理彩さんは魔法や能力でその辺がわかっているのだろう。
だから人から見ておいおいという事も口にする事も出来る。
逆に人以上に口をきかない事もある訳だ。
それは理彩さんの魔法なり能力故の特性。
常識にとらわれてはいけない。
ここは魔女の領域だ。
と色々頭の中を整理したところで。
「調達その1、かんりょー!」
整理を無にする存在が再来した。
「とりあえず用務員さんが植木等に使う太い銅の番線。2.6ミリの一番太いのを1巻き21メートル分貰ってきたぞ」
お、さすが会長。
面倒な性格だが頼りにはなる。
「次はプラスチック製の振り回せる強度がある棒だな。ちょっと待つのじゃ」
会長はそう言って再び姿を消す。
便利だけれど何かなあ。
そう思ったところで。
「試そう。何か他に必要な物は」
杏さんがそう言ってくれた。
「ええ。でもこの部屋では狭いので、廊下を使いましょう」
という事で。
僕、杏さん、未来さん、理彩さんの4人で。
会長が調達した銅の番線と巻き尺を持って外に出る。
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