僕の怪しい課外活動 ~特別科は魔女の巣窟~
於田縫紀
プロローグ 魔女との出会い
第1話 いきなり謎空間
ここは何処だ。
掻いた右腕が空を切る。
足の裏の感触も無い。
でも落ちている感覚は無いけれど。
視界も理解出来ない。
上下左右全てが全てがピントの合わない感じ。
輪郭とか具体的質感とかが何もわからない。
色の構成要素はさっきまでとおなじ感じだと思うのだが。
音もよくわからない。
無音では無いが理解出来ない。
何が起きているのだ。
パニックになりそうになるのを何とか食い止める。
こういう時は般若心経。
観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時……
意味は無さそうだ。
何がどうしてこうなった。
気持ちを落ち着ける意味もあって、僕は少し思い返してみる。
◇◇◇
僕は柿生正樹、15歳。
浅間工業大学付属高等学校1年生になったばかり。
入学式等の色々を終えて寮に帰る途中。
浅間工業大学とはここ、富士浅間研究開発団地の中核施設だ。
僕が小学校に入る頃設立された私立大学だが、難易度は総計並みに高い。
理科大より下手したら上だ。
ここ数年で私立理系大学のランキングを一気に上り詰めた。
何やらめざましい業績を上げているらしい。
でも附属高校は大学に全入できる割に人気が高くなく、偏差値的にお買い得。
なおかつ授業料や寮費等も国公立並に安い。
大学卒業後の進路もなかなかいい感じ。
なので地元を離れたかった僕は僕なりの猛勉強をして。
何とか本日入学式を迎えたという訳だ。
うん、色々思い出せる。
僕は正常。
そしてここへ来る直前を思い出してみる。
教室を出て。
昇降口付近で出口より先に並んでいる課外活動勧誘の列を見てちょっとびびって。
校舎内を逆方向に歩いて。
専門教室棟の方から外に出た。
そのまま校門までぐるっと回ろうと思って。
専門教室棟の角を曲がったところで……
こうなった訳だ。
この上下前後左右何もわからないよくわからない場所へ。
これはどういう状況だろう。
ただ観察しようにも視界が全く理解出来ない。
理解出来ない視界とか音声というのを理解出来たというべきだろうか。
このままだと気が狂いそうだな。
目を閉じて観念するか。
いや観念したら終わりだ。
でもこの状態は詰みだよな。
そんな堂々巡りしていた時だ。
「掴まれ!」
声がしたような気がした。
声色としては女の子。
でも何も何処にも見えない。
気のせいだろうか。
ついに気が狂ったのだろうか。
「見えなくても大丈夫だ。右手を伸ばせ!」
このままでもらちがあかない。
だから取り敢えず言われたとおりにする。
右腕を伸ばして。
手に何か触れた気がした。
僕はそれを握って。
そしてぎゅっと握り返されて。
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