闇憑少女

KM@サヴァン

第1話 闇憑少女と悪虐少年

「あはは、誠と出会ってからはまるでジェットコースターのように日々が過ぎていくよ」

無霧緋響は楽しげに、そう語る。

「お前はいつだってそうだろうが。俺と出会ったって出会わなくたってお前は変わらないさ」

阿久岐誠はつまらなさげに、そう答える。

「そうかなー、そうでもないよ。誠は私にとって特別だよ?誠以外に面白い人なんてこの世にいないくらいにさ」

緋響はどうでもいいように、あっけらかんと笑顔で語る。

その笑顔に偽りはない。

その言葉にも偽りはない。

「俺は普通だよ。少なくともお前よりはな」

誠も、本心からそう答える。

「やだなー、私だって普通の女の子だよ」

やはり緋響は、本当に心の底からそう思っていた。

本気で、自分は普通だと思っていた。

「…そうか」

誠は、緋響の言葉が正しくないことを嫌というほど知っている。

それでも、それを緋響に突きつけたりはしない。

誠がどう言ったところで緋響は自身の異常さを自覚することはないことはわかりきっていた。

しかし、自身の異常さを自覚していないのは誠も同じだった。

無霧緋響の隣に居続けられることが既に異常だということに、否、自分が無霧緋響の隣にいることに、まだ気づいていない。


これは、闇の権化のような少女と、悪の成り損ないのような少年が、無自覚に寄り添い合う日常の物語。















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