エッカート・マルルーレ

めるえむ2018

第1話

   一



バスを待つあなたを見ている

きれいに刈り込んだ髪

スーツもシャツもパリッとしてる

この時間だとあなたがいる

だから少うし合わせてみた

本を読んでることもある

スマホを見てることもある

彼女さん?

ではなさそう

バスの揺れに乗じて画面チラ見したら配本サイトだった

本当

本が好きなのね

吊り皮もつ手が大きくてきれい

名前も知らないあなた

お年寄りに手を貸したり

忘れものですよって声かけてあげたり

あなたは優しすぎる


思いつく

私も忘れ物しよう

あなたに気づいてもらおう

サブバックを持って乗り

うっかりのように忘れる


なんて…


出来ないわ…


私の停留所が近づく

今日のあなたとはさようなら

また明日ね

降りかける私に彼が示した


「お忘れですよ」


傘!


「ありがとうございます」


耳まで赤くなってしまった



下りてバスを見送る

優しい人

あなたは私をまだ知らない



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