メリークリスマス
めるえむ2018
第1話
目がさめた。
何か気配がしたからだ。
ベッドサイドに若い男。
赤い服。
「チカン!!」
叫んで跳ね起きる。
「違います違いますサンタです」
サンタ?
なわけないじゃん若くてハンサムで。
「まだ見習いなんです」
「そんなの信じれるわけないじゃない。ヒゲもない。体型だってスラッと」
「じゃあれですか? 全てサンタは太鼓腹で赤ら顔でホウホウホウって言ってなきゃだめなんですか? サンタだって若い頃、修業時代あるんです。そうゆうのだめですか!?」
声でかい声でかい声でかい。
「わかったからもうちょい声小さく」
仮にも寮だ。
私寮長だ。
男引き込んでるとか思われたら名折れだ。
「でなんであんたがここに」
「実は…この寮の…」
サンタ見習いの話はこうだった。
ソリからうちの寮の依頼票をおとしてしまい、どこをさがしてもみつけられない。
サンタに相談したら寮長赤羽梓(あかばね あずさ)にきいてこいと言われたそうで…
「あたし?」
「あなたなら絶対わかるって…サンタが言うもんで…」
あたしがわかるって…何で。
でも目を閉じる。
一号室の柳沢はプレステ5ほしいって言ってた。
二号室の田辺やすみはパーカーのいいやつとか言ってて。
三号室は…
「12号室はハムスター、ですね。これでうまった。
ありがとうございました」
快活に言って去りかける、せなかが止まり、振り向いた。
「赤羽さん。あなたは望まないんですか?」
はっとする。
走馬灯のように思いが走る。
梓。
梓梓梓。
下の子おねがいね梓。
梓は我慢してね。
梓ごめん、私もあの人好きになっちゃった。
問3の答えはあああ?
みんなのことはわかる。
してあげられる。
でも。
自分の望みは?
「メリークリスマス」
いきなりサンタが抱擁してきた。
かすかなトナカイの匂い。
しばらくそうしていてくれて、彼はもういちど言った。
メリークリスマス。
そして彼は消えた。
翌朝全員にプレゼントが届き、みんなの顔が輝いた。
柳沢がふと私を見る。
寮長何ももらわなかったの?
「私はもうもらったんだ」
そう言って笑ってみせる。
どこか遠くでトナカイのいななきがした。
そんな気がした。
メリークリスマス めるえむ2018 @meruem2018
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます