沈黙

おまえは問うた ほうこうしながら

れいろうきわまる満月が もうろうとして明滅している

こんとんとした大海原で どうもうきわまるとうに問うた


「なぜに生きねばならぬのだ」


おまえは問うた どうこくしながら

ねぎとしたくさむらが りゆうりようとして交響かなでる

せいひつとした湖畔において とそびえるがくに問うた


「なぜに死なねばならぬのだ」


おまえは問うた 絶望しながら

世界をあまねく遍歴したすえ 無残な孤独を味わって

ゆうすいとした夜空へむかって けんらんきわまる銀河に問うた


「なぜに罪をばおかすのか」


おまえは問うた きようてんしながら

世界の果てまでほうこうしながら ふんまんやるかたないらしく

ひようびようとした荒野において ぼうばくきわまる宇宙に問うた


「なぜに罰せられるのか」


しかし、おまえはえんにさけぶ

とうは勇猛なるままに がくは崇高なるままに

銀河と宇宙はさんらんたるまま おまえの悲嘆を聴いている


「なぜに沈黙したまうか!」


そして、おまえはおまえに問うた

おれはまことに生きているのか おれはまことに死せるのか

おれは罪などおかしてきたのか おれは罰せられてきたのか


「なぜにわたしは問うていたのか」


そして、おまえは問いかけた 沈黙しながら問うてみた

すると、とうがくでさえも 銀河でさえも 宇宙でさえも

森羅万象そのものも 沈黙しながら薫陶さずけた


「これが生きるというものだ!」

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