トリックオアトリート

めるえむ2018

第1話

 ルオが鏡の前にいる。

 懸命に包帯を巻いている。

 そうか今日は…

「パパ! パパ! 端結んで!」

 首の後ろで結んでやると、嬉しげに袋を振り回した。

「大きいの用意したなー」

「これいっぱいにするまで帰らないんだ」

 嬉々として言うルオに、そいつはちょっとムズカシイだろうと思ったが、あえて言わないことにした。

「真夜中までには帰るのよ」

 ママのことばを心中補足する。

 そのあとまで起きてるのは、大半変わり者だから。

「行ってきまあす」

 ルオは元気よくとび出していった。


 夜半、

「ただいま!」

と元気に帰ってきたルオを見て、成果あったなとひと目でわかった。

 あの大きな袋が既に満杯。


 別に小さめの紙手提げを持っていて、それにもお菓子がぎゅう詰めだ。

「それどうした?」

「いっしょに回った子がくれた。予備の袋用意してないなんてシロウトだなってゆわれた」

 シロウトねえ。

「いい子と回れてよかったわね」

 ママがくるくると包帯を解いていく。

 ルオのかわいらしい、ちょっとヤンチャな顔が出てくる。

 少し上向いた鼻がご愛敬。

 惜しむらくは、同族以外顔を見てもらえないことだ。

 どんなにオシャレしても、他族からは、服が歩いてるとしか見られない…

 それでもパパはママに出会ったし、おまえもきっと誰かに出会う。

 そうして一族は続いていく。

 もの思いの僕に、ママが近づいてくる。

 後ろから肩に両腕を回し、僕を包み込むように抱く。

「私は初めての時、シーツ被りオバケだったわ」

「僕はミイラ男。言ってなかったのに、ルオの選択も同じとはね」

「血は争えないってとこかしら」

 ママの唇が僕の頬に触れる。

 僕らのー族の良いところは、どんなにイチャついても、他人の目には触れにくいところだ。

 そう、僕らは透明一族。

 魔族で唯一ハロウィンへの参加が許されている。

 合い言葉は、『トリックオアトリート』。

 紙バッグをくれた子は、想像もしてないに違いない。

 一緒に回った相手が人間じゃなかったなんて。

 でもその経験は、ルオの記憶の片隅に、宝物となって残る。


 トリックオアトリート。

 ハッピーハロウィン。

 トリックオアトリート。

 ハッピー…ハロウィン!

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トリックオアトリート めるえむ2018 @meruem2018

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