第146話 突破口は作るもの。
森を進む事数分。
「なんか道間違えたかな〜?」
「私が先頭では無いから、そんな事はないはずだ。」
「きりんさん、それ自分で言いますか?」
何故道を間違ったか確認すると…。
「何を悠長にしてるのよ!」
「天ソラさんや、あまり騒がない方が…」
―グルゥゥゥ!!
「「ご、ごめんなさい!?」」
「あはは。2人とも慌てすぎだよ。」
「そうだぞ。戦闘に置いて冷静さを欠いてはいけない。」
「にしても和歌先輩ときりんさんは落ち着き過ぎですよ。」
「あんたもだけどね。」
「これどうするんですか?」
ひー、ふー、みー…20体くらいかな。森をゆっくり歩いて移動していると狼の魔物に出会った。
始めは1体だけだったんだけど、例によって先輩が瞬殺したのが始まり。1体じゃ勝てないと踏んだのか、俺達5人を囲み出して気がつけばこんな状況と言う訳です。
「1体で勝てないと踏んで頭数増やすのはいいんですが、中々攻めて来ませんね。」
「待ってればもっと増えるのかな?でもこれ以上増えると2人とも守れるかな〜?」
「「ひぃぃ!?」」
「和歌、滅多な事言わないものです。」
「「きりん様!」」
「2人だって戦えますよ。」
「「……。」」
「無言で俺を見られましても…まぁなんとかしますよ。」
話を聞くにそんな戦闘訓練をしていないらしい2人だって言うのは知っていたけど。
狼の魔物に囲まれたくらいでこうなるんだろうか。大きさもゴールデンレトリバーの2〜3倍だしよく見れば可愛い顔してるのに。あ〜どうこうしているうちにまた増えた。
「ではそろそろ動きましょうか。基本1人で突撃、残り2人が背中に2人を庇いつつ戦闘。これくらいの数なら余裕ですが、牙や爪には気をつけて下さい。」
「りょ〜かい。」
「あぁ分かった。」
「誰が前いきます?」
「ん?1と2で分けるなら翔くんでいいんじゃない?」
「作戦聞いた時から翔が前だと思っていたが、私がやろうか?」
「やりたがるかなっと思ったんですが。」
「ここに留まって守る方がシンプルで分かりやすいし。」
「そうだな。向かってくるモノを叩き伏せればよい。」
「お2人がそう言うのであれば…少し本気マジでやりますか。」
これだけの状況でも頭はクリアで調子もいい。海王種を見たからか、なんとか出来ないとは思っていない。
だからと言って油断して自分自身が負傷する訳にもいかない、皆を怪我させるつもりも毛頭無い。
「それではいきま…す!」
―ヒュン…ドス、ドーン!
「グルゥ!?」
一番先頭にいた狼の魔物の懐に入り後ろに吹き飛ばす。何体か巻き込まれて吹き飛んでいく。
俺はそこから反転、真ん中にいる4人を飛び越える。
―ザッ、ヒュン…ガシ!
反対側に飛んで狼の魔物首根っこを掴んで…全力投球!
「せぁ!」
「グルゥゥゥ…」
後ろにいた数体巻き込んで森の奥に吹き飛んでいく。十字の前後をなんとかした後の、左右の魔物達は…
「「ガルゥ、ガァァァ!!」」
中央の先輩に向けて襲いかかろうとしている。両方は間に合わない…それであれば。
「ッシ!」
―ザッ!
右側の魔物に向かいその魔物を中央に蹴り上げる。蹴り上げられた魔物は空中では成すすべなく…。
「そう言うことね。任された〜とぉ!」
打ち合わせもしていないが先輩なら分かってくれる。
「しゅーとぉー!!」
―ドゴッ!!ヒュー…ドガ!
頭上に上げたクリアを見事なオーバーヘッドキックで魔物の群れに吹き飛ばされる。
結果的に俺の反対側の魔物を一掃された。
「よぉ〜しストライク!」
「では私は北の魔物を減らしてきましょうか。」
「きりんちゃん気をつけてね〜」
「2人は任せましたよ。」
「「え?」」
「任された〜。」
後ろを確認して、西側はうまくいったみたいだな。北側はきりんさんで、東は俺がなんとかすればいいとして。
2人は先輩が見てるのか……不安だ、早くここを片付けよう。
「よし!」
「和歌さ〜ん。な、何が良しなのかしら〜?」
「それを聞いたらだめなきがするよ天。」
「あっちの魔物と戦ってみよう。2人なら大丈夫でしょう。私は残りの子を相手してくるよ。」
そう指差したのは俺が初撃で数を減らした南側の魔物。西側の魔物も何体か残っていて先輩はそれをやっつけにいくみたいだな。
「いやいやいや、いきなりですか!?」
「大丈夫、天と奏人くんなら出来るよ〜」
「こうなればやるしか無いよ天。和歌さん何かアドバイスってありますか?」
「ん?そー言うの翔くんの担当なんだけどなぁ〜…当たって砕けろ?」
「砕けちゃダメよね!!??」
「え〜…じゃぁ〜命を大事に。」
「なんだか投げやりですけど。それが一番しっくりきますね。」
「では、レディー…ゴーです!」
一気に加速した先輩が西側に突っ込む。先輩ときりんさんは大丈夫として、坂俣さんと奏人さんをフォロー出来るように見ておく。
「とにかく今は1発アウトな状況で、全ての攻撃を避ける方向でいきましょう。」
「そうだね。当たらなければ…って事だね。」
回避専念で2人は狼の魔物の攻撃を避けている。
そう、ただひたすらに…少し厳しそうな連続攻撃に対して小石を投げて牽制するフォローはしておくけど。回避に専念した戦いは2人に合っているのか、魔物の方が疲れたのか動きが悪い。
「魔物との戦闘ってゲームでも多少武器くらい持ってるものよね。」
「あの3人は素手だよ。」
「そうなのよね。魔法があるけど強化止まりだし、火ぐらい出せても良さそうよね。」
「理屈が分からないよねー。出ろって思えば出るものでも無いし。」
少し余裕はできているみたいで、あれこれ喋りながら魔物の攻撃を避け続ける2人。俺も東側を一掃してそんな2人の動きを見ていた。
「翔、終わったぞ。あれはどんな状況なんだ?」
「あ、きりんさんおかえりなさい。なんか回避専念の戦闘スタイルみたいで、攻撃をどうしようか相談してるみたいです。」
「始めはビビってたのに慣れるの早いね〜。」
「和歌先輩、おつかれっす。和歌先輩の荒療治が良かったんですかね?」
「そうそう。私達だって初めて来た時は大きい熊さんだったし。」
「逃げましたけどね。」
2人の戦闘を見て観察している。
「ちょっとそこ、見てるなら、何とかして、よ。」
「え?そのまま反撃すればいいのでは?」
「避けるのに神経使って、どう攻撃していいか、分からなくて。」
「天ぁ〜ヒュン!ズカ!ドゴーン!だよ。」
「…。」
「ならば私がアドバイスを…懐に入り思いっきり蹴るだ。」
「いや、それ無理です。」
牙や爪に注意して攻撃を受けないように言ったのちゃんと守ってるんだな。
さてどうしたものか…先輩のアドバイスはアドバイスじゃないし。きりんさんが言うのはもっともだけど、それが出来ればこの状況にはならないだろう。
「翔さんも、見てないで、助けて。」
「ん〜攻撃をここまで避けられれば及第点か。じゃ和歌先輩、きりんさんいきましょうか。」
「そだね〜また狼さんが増えても面倒だしね。」
「しょうがない。見本も必要だな。」
先輩ときりんさんが一気に距離を詰める。相手が爪でなぎ払おうとした目の前から、相手の死角に回り込み渾身の蹴りを。
「ぐぅふぅ」
20体程の魔物の群れは狼が発しないであろう言葉を残して一掃された。
「ん。いい仕事したね。」
「まだまだ物足りない気もするが仕方がない。」
「揃いも揃ってどんな特訓してたのよ。」
「ん〜至って普通だと思うけど。」
「和歌。その普通は私達にとっては異常だから。」
「え〜そんな事ないよ。」
「魔物も倒した訳ですし、今のうちに進みましょう。」
そうして俺達5人は狼を無事に討伐出来ました。
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