第142話 夏から始まった冒険。
なんとなく気配を感じ目を開けた。
「ん、ふにゃ〜…すぅ。」
「………ぉぅ。」
目の前に先輩の顔が!?…て期待した人だーれだ?現実はそんな事は無いのだよ。あと1センチ顔が前にいっていたら、不意打ち裏拳を貰っていただろう。
「まだ起きるには早いな、少し外に出てくるか。」
朝と言うには少し薄暗く、周りは人の声もしない静かな感じである。この時間に起きて海が近くにあるんだ、日の出でも見てこようかな。
『んぁ?…翔か。こんな早くからどうした?』
「アムールか。いや、ちょっと目が覚めたから散歩がてら海に行こうかと。」
『ふーん。そうか。俺はもう少し寝るわ…おやすみ。』
宿の前でアムールと別れて海に来た。
―サァ…
「まだ少し暗いから日の出は見れるかな。」
―サァ…
「昨日ここで戦闘してたとは思えないくらい静かだな。」
―サァ…
「…今まで気にしてないけどこの世界でも太陽はあって東から昇るのか?」
―サァ…
「本当に当たり前が何だかん分からなくなるな…そして独り言ってる俺寂しいやつみたいだな。」
「それであれば私がお付き合いしますよ。」
「うぉ!き、きりんさん。」
「ふふ。おはようございます翔さん。」
「あ、おはようございます。」
海で黄昏ていたらきりんさんが隣に居てびっくりした。俺が起きたのに気がついて一緒に起きたらしい。俺の居る海まで来たのは偶然なのかな?
「ん?どうかしましたか?」
「あ、いえ。き、きりんさんも日の出を見に来たんですか?」
「私は宿から外に出た時にアムールさんを見つけまして。ここに案内してくれました。」
「で、ブツブツ言ってる俺を見つけたと。」
「アムールさんに翔さんはどこか分かりますか?って聞きましたからね。」
「俺を探していたんですか?」
「はい。お話したいなっと思いまして。」
「……。」
「……。」
突然何をきりんさん!平静を装ってる俺だが内面バクバクですよ。
そしてしばらく沈黙になる2人。こんな感じどこかであったな…あれは森果町で町を探索した時だったな。
ちらっと横を見ると海を見つめるきりんさんが…まつ毛長いんだな。俺は何を考えてるのだ!落ち着こう、すぅ…はぁ〜。
「森でもそうですが、海はまた違った空気でおいしいですよね。」
「は、はい。そ、そうですね。」
「ふふ。口調が辿々しいですよ。」
「はは。いつものきりんさんみたいですね。」
「私はそんなんじゃありませんよ〜。」
「そう言えば、今は普通に喋れてますね。」
「翔さんと2人だと落ち着けるからでしょうか。でもドキドキはするんですけど。」
「え?」
「いつもみたいなドキドキではない、なんと言えば…心地いい感じ?よく分からないですが嫌な感じはしないんです。」
「そ、そうですか……。」
なんだこれは?俺は今どう言う状況なんだ?空気がうまくてドキドキする?きりんさんが普通に喋れている?うまく言葉が出てこない。
そんなどうしていいか分からない状況に混乱する中、東から光が差し込んできた。
「眩しい。やっぱりこっちの世界でも東から太陽は登るんですね。」
「そうですよ。そんなの当たり前なのでは?」
「いや、そう思ってたんですよ。でもこの夏は色々な出来事があって知らない事が多いんだなって思いまして。」
元の世界とこの世界の共通点に不思議にそして何も知らない自分に気が付いた。学生をしている時は考えもしなかった。家と学校の往復に部活を先輩と一緒に…。
「どうかしましたか?」
「いつもと同じ生活でもいいけど。折角この世界に来たんだし、見て回る旅もいいかと思いまして。」
「そっか、翔さんいなくなっちゃうんですね…。」
「あれ、俺の中ではきりんさんは一緒だったんですけど。」
「え?私も?」
「えぇ。話してませんが、先輩も来ると思います。あとあの2人にも声かけて。あ、部隊皆んなでいけたら面白そうですね。」
「それは面白そうですね。でもルカが来るでしょうか?」
「あ~行かなそうですね。きりんさんは来てくれますか?」
「も、もちろんです。」
「そうですか。よかった。最悪一人かもって思ってて心配だったりしたんですよね。ははは。」
「そ、それなら…いいな。」
「ん?何か?」
「な、な、なんでもないです。」
その後も海で色んな話をした。これからの事、これまでの事…そしてその前の事。きりんさんは何も言わずに聞いてくれた。楽しい事も辛い事も、元の世界にいる親に何もできなかった後悔。
「色々あったんですね。」
「…はい。」
「もしもその後悔があるのであれば、ここで生きて下さい。いつかまた会えますよ。」
「会う?そんな事が?」
「出来ないと決まっていません。だってまだこの世界の事何も分からないのでしょ?」
「そっか…。そうですね!一緒に世界を知りましょう!」
「はい!」
今生きているこの世界はまだ何もわかっていない。元の世界の事も何も分からないままだ。
だから生きるのか、ここで俺は何をしていくのか。
時間は死ぬまでか、それなら頑張ってみますか。
夏から始まった冒険はこれからも続いていく。
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