旅の終着とその先。

第143話 体力の限界とは?

 天河森の学園前で集まる世界を知る旅の始まりだ。


「さて、まずどっちに行くかだけど〜翔くん考えてる?」

「はい和歌先輩。まずは東に進んでみようかと。皆さんそれでいいですか?」


 先輩に言われ俺はすぐに答える。別に事前に打ち合わせとかはしてないし、これから一緒に行動するメンバーなので全員に確認はしておく。


「翔さんに従いますよ。僕達は着いて行きますので。」

「私も問題は無いわ。」

「は、はい。お、お任せします。」


 奏人さん、坂俣さん、きりんさんが続いて答える。


 2人に聞いた話では天河海の人達に声はかけたけど、橋の復旧やらで来たのは転移組の2人が来てくれた。

 当然天河森のバド部隊の人にも声はかけたんだが、きりんさんと先輩といつもの3人だけになった。




 夏の森果町や天河海に行ったりして色々考えるべきところができた。大きい理由としては天河海にも転移者がいて、元の世界と今の世界での違いに疑問をもった事。海できりんさんと話しをして決心がついた。


 天河森に戻って今回の旅の事で学園長に相談行った時あっさり了承が出た。


「旅!そうかの、羨ましいの……こほん。気をつけるのじゃぞ。」

「あれ、随分すんなり許可が出るんですね。」

「ん?学生とは言え別に縛る何かがある訳じゃないしの〜やりたい事を止める無粋はせんよ。」

「そうですか。他の方々に声をかけても?」

「基本は本人達に任せておる。たま〜にお願い事はするがの。」


 ローランドさんとリコさんは食堂でばったり会ったので誘ってみた。


「旅かぁ〜どうすっかな。そっちも気ままで面白そうだな。」

「翔。ちなみにそれはどーやって行くのぉ?」

「どうやって?走るでしか考えてませんね。馬車とか馬の世話とかよく分かりませんし。」

「「……。」」

「どうかしました?」

「んー実は少し前に学園長からお願いされてる事があってね。ローと行くか考えてたんだよぉ。」

「え、それって俺が、」

「ふん!」

「いた!」


 がたって音と涙目のローランドさん、何かぶつけたのだろうか?


「てな訳でそっちは私達が手伝うから、翔達は行ってきなよ。」

「でもそうなると俺達も手伝う方が…。」

「和歌に直させる?きりんさんは料理ができても壊す方が得意な人よ。」

「リコさんそれは言い過ぎでは…否定は出来ませんけど。」

「そ〜言うことよ。ま、誘いはありがとう。」


 次にルカさんの研究所?工房?に来てみた。


「分かったわ。じゃ必要になりそうな物は私とヘレンで集めるわ。」

「え、良いんですか?」

「ええ。使った感想を帰って来たら聞かせてちょうだい。」

「あれ?一緒に行かないんですか?」

「私が外に?しかも走るのよね?私の体力じゃ着いていけないわ。」

「そんな事は…。」


 隣にいたヘレンさんに視線を向けてみる。悟った様に首を振ってくださいました。




「てな感じでした。天河海はどうでした?」

「「…はぁ、はぁ…。」」


 俺達5人は学園から東に向け走ってる。先頭は先輩ときりんさんで、その後ろを俺と奏人さんと坂俣さんが続く。ただ走ってると退屈なので話しているが返事がこない。


「はぁ、はぁ、はぁ…ふ〜、あれ…よ。」

「…す、すこ、し…。きゅ…け、を…。」

「ん?あれ?少し急ですか?」


 2人が何かを伝えようとしているけど、途切れ途切れで声も小さいからうまく聞き取れない。


「和歌先輩、きりんさ〜ん。止まれますか〜?」

「ほい来た。」

「は、はいです。」


 速度を徐々に緩めて止まった。するとその場にヘタリ込む奏人さんと坂俣さん。


「なに〜翔くん。

「ど、どうかしましたか?」

「いえ、2人が何か伝えようとしてて。」


 しばらくして息を整える2人。


「はぁ〜…ふぅ〜……。」

「……。」

「「体力の限界!」」

「お〜天と奏人くん息ぴったし。」

「息を整えてるだけにですか?」

「す、少し抑えめでした…よ?」

「ど、どこの世界で全力疾走を1時間も走れる人がいるのよ!」


 息を整えた2人が息ぴったしは置いておいて。きりんさんが言うようにいつもよりは抑えて走っていたと思うけどな。どこの世界でって言われたから、俺達3人を指差してみた。


「そ、そうね。言い方を間違えたわ。一般の人でを付け足して頂戴。」

「一般の人…俺達?」

「「それは無い!」」

「あはは、やっぱりぴったりだ〜」


 坂俣さんと奏人さんに一般である事を否定された。そして息ぴったりなところを拾う先輩。


 結局休憩をして出発前に配列の変更をした。坂俣・奏人ペアに真ん中をきりんさん、最後尾を俺と先輩。まぁ急ぐ旅でも無いし、2人の言う一般に合わせる事になった。


「景色見ながら走るって感じだね〜。」

「と言っても変わらず木、木、木と言う感じですけどね。」

「い、いつも走らない場所。し、新鮮ではあります。」


 周りをキョロキョロしながら走る先輩。とは言え森だからそんな変わった感じはしないけど。きりんさん的には微妙に違うらしく新鮮だと言う意見も。


「あ、あなた達。よく、走りながら…喋っていられるわね。」

「僕等は、これで、やっとなの…に。」

「いつも走ってますし慣れってやつですかね。魔力自体もあまり使って無いからって事もありますね。」

「慣れとかで、片付けて…欲しく無いわね。」

「翔、さん。ま、魔力って…なんでしょう?」

「あれ?2人とも走る時どうしてるんですか?」

「何も考えて無いわ。」

「僕も…。」


 2人は走りながら魔力は特に気にしていなかったみたいだ。まぁ向こうは海だし、走り込みもしてないって言ってたから気にしなかったのかな。2人のペースでしばらく走った後の休憩で教える話になった。走りながら教えればいいんだけど、そんな器用な事出来ないって否定されてそうなった。


 そしてまたしばらく走り続けて休憩の時間になった。さて、教える事になったがどうしたものか。そして頭を過ぎったある事を…。


「2人共、元の世界でアニメや漫画とか見たことってありますか?」

「僕は有名なタイトルのくらいなら見てたかな。」

「バトルもの限定で観てたわね。それがどうかしたの?」

「教えるに当たって使えるか確認しただけですよ。」


 2人はアニメや漫画を知ってると言ってくれた。それともなら簡単だろう。こうして2人の修行が始まるのだった。

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