第134話 問題は何もない。

 なんだかんだで外に来たのはいいんだが。救援要請で天河海に行く事になったと言う事しか分からない。


「きりんさん。出発前に1つ…何個か聞きたい事があるんですが。」

「なんだ?」

「海王種って何かが出て、その救援に行くんですよね?」

「あぁ、そうだな。」

「天河海ってどこにあるか知ってるんですよね?」

「……分かるとも。」

「始めの間は何かあるんですね?」

「……北に真っ直ぐだ。」

「本当に?」

「……のはずだ。」

「……。」


 細かい説明を聞かずに森に来たから、最低限の知識をって思っていたがとんでもない問題が出てきた。

 始めは海王種についてとか、戦闘になった時どうするのか諸々考えないといけないと思うけど。たどり着けなければ意味がない。


「翔くん。とりあえず北に向かえばいいのなら、途中にある騎士部隊のお家に聞きにいけば?」

「和歌先輩、冴えてますね!」

「え?兄のとこに行くのか?それはそれで…。」

「どうかしました?」

「まぁ行けばわかるさ。」

「?」


 先輩の提案通り北に向かえば騎士部隊がある。アメリさんかツェゴさんなら知っていると思う。

 きりんさんの歯切れが悪いのは気になるけど、それは行けば分かるだろう。



――――――。


「ん?きりんの気配がする!」

「突然なんですか。きりん様がここに居る訳……来ましたね。」

「きりーーーーーん!!」


―っす。


 ずざぁぁぁぁ。


「避けるなんて!」

「ふん!」

「げふぅ。」


 一早く気配に気が付いたアメリさんはきりんさんに突っ込んでいた。それを当たり前のようにそれを回避すると、そこにツェゴさんが踏みつける。


「ツェゴさん?このあ…ぐえ。」

「話が進まないので黙っていて下さい。それで何か御用なのでしょう?」

「…あ、はい。北の天河海に急いで行きたいのですが、正確な場所が分からなくて。」

「案内は可能です。ですが走るのですよね?私達では追いつけません。そうなると…。」


 さくさく話を進めてくれるツェゴさん。案内は出来るみたいだけど、走る事に問題があるみたいだな。

 考えているツェゴさんに近づく影。


『よぉ。翔久しぶりだな。』

「この前の豹だな。元気してたか?」

『あぁ。ツェゴの姉御に世話になってるぜ。』

「ふーん。それは良かったな。ん?今なんて…?」

「この子と何を話しているのだ?」


 あの時の豹が声をかけてきた。ツェゴさんにお世話になってるみたいで元気そうでなにより。ちょっと気になる事があったような。


「あ、ツェゴさん。ただ久しぶりだって話ですよ。」

「そうか。君は天河海って土地を知っているか?」

『天河海って言うのは、人が言う土地の名前なのか?』

「なんと言っている?」

「天河海って人が言う土地なのかと言ってます。」

「成程。人が言う土地ですか。では特徴をお話ししましょう。河を辿り森を抜けると海に出ます。河と海の境目に町があり、海に向かって桟橋が渡っている。その海の真ん中に学園があり、その地域一帯を天河海と言うのです。分かりますか?」


 魔物には天河海といっても伝わらなかった。ツェゴさんが細かく豹に教えていた。正直そこまで詳しく教えてもらえれば自分でも行けそうだな。


『海の街なら行けるぜ。』

「行けるみたいです。」

「そうですか。あとはこの子が翔様達に着いて行けるかだけですね。」

『は!姉御は何心配しているのか。ちゃんと速度は合わせるさ。』

「俺達に合わせてくれるそうです。」

「そっちの心配ではないのですが?この子がそれでいいならいいでしょう。」


 案内役は決まったらしい。豹だし脚は早いんだろうけど、俺達に合わせてくれるみたいだし大丈夫だろう。


「よし行くか豹…なんか味気ないな。そう言えばお前に名前はあるのか?」

『アムール。一応名はあるが好きに呼んでくれ。』

「そうか。よろしくなアムール。」

「名前はアムールくんか。よろしくね~。」

「アムール殿、案内よろしく頼む。」

「アムールと言うんだな。覚えておこう、気をつけてな。」

『おう。こちらこそよろしく頼むぜ。』


 案内係がさくっと決まって、これから天河海に向かう事になる。少し寄り道したが、これで迷う事もないだろう。


 そう言えばきりんさんの歯切れが悪いのは何だったんだろう?



「俺も行くぞ、きり…」

「てぁ!」


―ぐふ……。


 問題は何もなかったね。


 気を付けて行ってきます!

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