第121話 熱の冷めないうちに?

 その後は大きく動く事はなく試合はマッチポイント。


「サービスオーバー、トゥエンティー・エイティーン・マッチポイント。」


「はぁはぁ。」

「ふぅぅ…。」

「さぁ!これで決めるわよ!!」

「シロク、サービスは私よ。」

「あれ、そうだっけ?はい。」


「体力的にも魔力的にもきつそうね。」

「前半派手にスマッシュとかしてましたからね。」


 坂俣さんの意見に奏人が冷静な分析をする。


「それにしても、シロクさんは元気すぎますけど。」

「シロクは体力と魔力量はうちでは一番あるからね。」

「私は元気のない彼女の姿を見た事ありません。」


―スッパン。

―ピン。

―ピン。


「せっ!」


―スパ!


 ショートサービスをヘアピンで返して、そこからドライブで攻めるリコさん


―スパ!

―スパ!

―ピン。


 ドライブに対してロスアさんは冷静にヘアピンでいい所に落としてくる。


「っく!」


―パン。


「いっくぞぉ!」


―ズパァン!


「まだまだ!」


―パン。

―スポーン。


「てやぁ!」


―ピン。

―パン。


「うおぉぉぉ!」


―スパン!

―パン。


 ギリギリでヘアピンを拾ったが、シロクさんがスマッシュで決めにくる。ローランドさんが拾うと、ロスアさんがドロップで落としてくる。それに反応したリコさんはヘアピンで返す。

 ロスアさんがロブでコート奥に飛ばしたものを、ローランドさんは普通のスマッシュで応戦。2人は最後まで諦めなかった。


―こつん。


「マッチワンバイ、ロスア・シロクペア。2-0」

「「ぜぇ、はぁ。」」

「ありがとうございました。いい試合でしたわ。」

「2人ともお疲れ!楽しかったぞ。」

「こちらこそ、ありがとうございました。」

「負けたのは…悔しいけど。楽しかった、ありがとうございました。」


『熱い展開の試合でしたね。』

『一球一球に対して諦めない姿勢が素晴らしかったです。』

『打ち合いもそうじゃが、見え隠れする戦略も良かったのぉ。』

『さてさて、このまま次の試合行っちゃいますか?』

『このままの流れで見たい気もしますが。選手達に聞いてみては如何でしょうか。』

『そうじゃの。次の試合はシングルス2じゃな。両者どうなんじゃ?』


 試合の興奮が冷める前に次の試合をしたいみたいだ。朝早めに始めた点と、和歌先輩がストレートで終わった為お昼には些か早い。


 皆は次が早く観たいという所もあり、俺としても早く試合が出来る事に関しては喜ばしい。


「俺はいつでも。相手は…。」

「私が相手だ。先程の試合で疼いていたところだ。出来るのなら始めようじゃないか。」

「はい。兵頭 翔です。よろしくお願いします。」

「これは丁寧に。私はラプテ・セーチだ。よろしく頼む。」


 お互いに見合って握手を交わす。ラプテさんは筋肉質な体型からか俺より大きく見える。握手をしたが手の平の厚みが全然違うわ。


『何だか並ぶと翔くんが小さく見えるね。ヒョロ…スマートなのかな。』

『ラプテは無駄に…あ〜がっちり鍛えた体型をしているからでしょうかね。』

『和歌にルフィスよ、心の声が漏れとるぞ?まぁいいがの。』


 お互いに気持ち酷い言われようだな。


「凄く鍛えてますね。ガッチリしたその体型は男らしいです。」

「君も引き締まった素晴らしい体型じゃないか。」

「「……。」」


 お互いに相手を褒めてみたが謎の沈黙が包む。


「と、とりあえず、準備でもしますか!」

「そ、そうだな!」


 何とも言い難い雰囲気の中、黙々と準備運動する2人であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る