第104話 普通なんだよ。

 ここまで色々やってきたが、流れはまだ俺と先輩にある。俺はサービスの準備前に先輩には4本のロブで合図を忘れない。


ースパーン。


「きた!うりゃぁぁ!!」


ーズパァァン!!


「…ほい。」


ーパン。


「まだまだ!うりゃぁぁ!!」


ーズパァァン!!

ーパン。


「はは!おもしれぇ!うりゃぁぁ!!」


ーズパァァン!!


 繰り返し同じ所にロブで返す先輩。本来ならそこで切り返しをしてくる方が良いんだけど。

 ローランドさんは相変わらず真っ向勝負。前に落とせばリコさんが反応出来るようにしているのだろう。


ーズパァァン!!

ーパン。

ーズパァァン!!

ーパン。


 決め球も先輩には通じない。

 そもそも真っ直ぐにしか飛んでこないから、拾うのもそんな難しくは無い。正確に同じ所に来る事に慣れてきたか、ローランドさんのフットワークも怪しくなる。

 そんな様子に先輩も気づいて、逆サイドにロブを上げる。


ーパン。


「っと。」


ーパーン。


 ローランドさんはスマッシュは打たずにクリアで返してきた。

 そんな送球に俺は2本のクリアを合図。それと同時に先輩と逆サイドに下がる。


ーパーン。


 俺が下がったのを見て先輩は逆サイドの後方に下がる。

 そうなると当然前が空く事になる。ドロップを誘う動きだったが…。


「ん?っく!?」


ーパン。


 俺と先輩の中間に返ってきた。


「翔くん。」

「はい。」


ーズパァン!


 それをスマッシュで相手のコートに沈める。


「フォー・ラブ。」


ーぱん!


 先輩とハイタッチを交わす。


「ふぅ…凄いな。」

「ん〜言葉を越えた何かを感じるよぉ〜」

「ホントだな。でも、なんかカッケーな。」


「なんか視線が気になりますね。」

「そう?別に気にしなければいいよ〜それより、そろそろいい?」

「ここまで我慢出来た事が奇跡か。」

「ん?なにかな。」

「いえ、こっち事です……では暴れますか。」

「そうこなくっちゃ!試したい事あるんだよね!」

「では、ショートからいきますよ。決めて下さいね。」

「まっかせなさい!」


 目の色を変えて構える先輩。これからの俺達は誰にも止められない。


ースッパン。

ーパン。

ーヒュン…ズパァン!


「「っえ?」」

「……あ、ファイブ・ラブ。」

「うん。いけそう。」

「出鱈目っすね。音が遅れて聞こえるとか。」

「おいおい、今何したんだ?」

「スマッシュしただけだよ?」

「だけって事は無いだろうよ。」

「それはですね…。」


 俺は疑問にしている2人に説明をした。ショートサービスでリコさんに打った。それをロブで上げた所までは普通だった。だけどその後がローランドさんが言うだけじゃ無い事。


 本来のバドミントンは打った球の下に入り打ち返すのが普通だ。

 それは何故か?答えは簡単だ。届く高さまでジャンプ出来ないから。


 ならば届いたらどうなるのか?


 試合前に俺は先輩にある事を聞かれた。ネットを越えた後、打ったら反則かな?

 ルール上問題ない事を伝えるとやってみたいって言われていた。後半の切り札として温存しておく話になっていた。


「ね?スマッシュしただけでしょ?普通なんだよ。」

「いや、和歌の中の普通ってなんなんだよ。」

「ははは。でもそれにも対応していかないと。俺達には勝てませんよ。」

「何ぉ!まだ5点目だよ。やってやるよロー!!」

「お、おう!!」


「話は終わったか?再開してもらいたいんだが?」

「あ。きりんさん、すいません。」


 前に向き直り俺達は試合を再開した。

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