第86話 皆はいつも通り。

 学園に帰って来た俺達は夕食まで部屋で休む事にした。


「あ、後で食堂で。み、皆には声かけとくね。」

「はーい。じゃ、私達は部屋に行こうか。」

「そうですね。洗濯とかしておきたいですし。」

「翔くん。お母さんみたいな事言うね。」

「また、そんな事言って。和歌先輩より年下っすよ。」

「あはは。そうだったね〜」


 魔法陣で部屋に向かう。

 …い、いいなぁ…。


ーブォーン。


「和歌何か言いました?」

「ん?何もいってないよ?」


 魔法陣に入る前に何か聴こえたような…。


 んーまぁいいか。


 

…。


……。


 部屋で少し休んだ俺と先輩は食堂に向かう。そこには先に来ている人達がいた。


「お。翔に和歌さん。久しぶり。」

「任務ご苦労!元気だった〜?」


 食堂に居たのは、ローランドとリコさんだった。


「お久しぶりです。と言っても1週間ですがね。」

「2人はずっとここに居たから、そう思ったのかもな。」

「そうですね。」

「翔達なら3日くらいで戻れると思ってたが、道中迷ったか?」

「行きは問題無かったですよ。」

「別の日迷ったけどね〜きりんちゃん方向音痴で、突き進むから大変だったよ。」


 4人で話しているとそこにルカさんとヘレンさんが来た。


「2人ともおかえり。それと依頼お疲れ様。」

「…。」

「はい。ただいま帰りました。」

「ルカちゃんただいま。ヘレンさんも。」

「…あぁ。」

「今回は少し長かったわね。やっぱり、きりんが迷った?」

「やっぱりって。網野さんはそんなに迷うんですか?」

「ええ。任務に行くと大概迷うわね。」

「皆さんもいろいろ経験済みなんですね。」

「一番困ったのは、道を確認しようと止まってたら、きりんが行方不明になって。」

「網野さんって完璧な人に見えるけど、意外に抜けている所もあるんですね。」

「きりんのそんな所が可愛いのよ。」


 しばらく話していると、網野さんと学園長が来た。


「随分と盛り上がっておるな。」

「あ、学園長ときりん遅かったじゃない。」

「い、いろいろと報告が多くて。」

「それより何の話じゃ?」

「あぁ。きりんの迷子エピソードを語っていたところよ。」

「え、えぇ!?み、皆それは言わないでよぉ。」

「はは。そんな網野さんも可愛いって話してたんですよ。」

「か、翔さん!?…う、うぅ。」


 顔を真っ赤にして学園長の後ろに隠れる網野さん。


「…ん?おや?あぁ~そう言う事か。」

「ん?何がそう言う事なのぉ?」

「ルカさん、俺も分からないっす。」

「リコとローは、気にしないでくれていいのよ。」

「んー気になるなぁ。」

「考えても分からないなら、今はそのままでいいだろう。」

「それもそうだねぇ~」


 ルカさんが意味深な事を言って、俺の方をニヤニヤ見てくる。

 ん?俺が何かしたのだろうか。先輩までも俺を見てくる。


「2人ともなんですか?俺の顔に何か付いてます?」

「「……。」」

「きりんちゃん。ガンバだよ。」

「私は見守っててあげるわ。」

「う、うぅ。お、お願いだから。な、何もしないでよ。」

「ん?」

「青春だのぉ。」


 久しぶりに全員集まっての、食事は賑やかで楽しかった。

 こうしてまたいつも通りの明日が来る。


 俺はそう思っていた。

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