第74話 2人でゆっくり。

俺と網野さんはどこかに向かって歩いている訳だが。

チラチラこちらを見てくる人がいるな。

俺は何かしただろうか?


「し、視線。き、気になりますか?」

「網野さんも気づいてました?何かあるんですかね?」

「か、翔さんを見てるのかと。」

「俺ですか?」

「お、一昨日の蛇を蹴り飛ばして。そ、それを見て気に入られた。み、みたいです。」

「…あぁ、あれか。それは町長に?」

「は、はい。」


町の入口に何人か居たし、蛇を蹴り飛ばす人とか町の人からすれば気になるか。

しかし、偶に睨まれてる気もするが…。

これは網野さんと一緒に歩いてるからだろう、男からの視線が特に強いし。


「まぁ〜気にしてもしょうがないっすね。」

「そ、そうですね。」

「ところで、今向かっている所は遠いんですか?」

「そ、そんな遠くないはず。は、走ったほうが?」

「いえいえ。2人でゆっくり歩くのは歓迎です。」

「!!…そ、それは良かった。で、です。」

「遠くないのなら、どこかで何か食べないかな?って思いまして。」

「は、はい。な、何にしましょう?」

「そうですね…」


なんでもいい、は基本的に言ってはいけない。

周りを見ると候補は3つありそうだ。

カフェぽい所は少し混んでるが、女子は好きそうだな。

定食ぽい所は、職人のおじさん達が騒いでる。ここは無しだな。

もう一つは露店か。そうなると歩きながらか…座って食べれそうな所はあるかな?


「うーむ。網野さん。あそこの露店覗いて見ませんか?」

「は、はい。」

「いらっしゃい!軽食からお菓子もあるわよ。どれにしますか?」

「サンドイッチとか良さそうだな。どうですか?」

「は、はい。そ、それで。」

「デートかい?若いっていいわねぇ〜」

「!!??い、いえ。わ、私達…」

「はっはっは。そんな緊張する事もないよ。そこ曲ってすぐに広場とかおすすめよ。」

「あ。お金です。で、俺達は…」

「ほら彼氏もしっかりリードするんだよ!お菓子もおまけしといてあげるから。」

「あ、あうぅ〜…」

「い、行きましょうか。」

「仲良く食べるんだよ。いってらっしゃい!」


ひらひら手を振って見送る店のおばちゃん。

網野さんは顔を真っ赤にして俯いて俺についてくる。

あれ以上何を言ってもおばちゃんのペースだったから、俺は話を切り上げて移動する事にした。


「さっきのおばちゃんが言ったのはここか。あそこ座りますか?」

「…!(こくこく)」


とりあえずベンチに座る俺達。

間も持たないので食べるかな。


「網野さん。どっち食べますか?」

「…こ、こっちを。」


2人で黙々とサンドイッチを食べてる光景は周りからどう見えているんだろうか。

そんな事を気にしつつ、静かな昼食は始まったのでした。

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