第66話 いってきま〜す。

―ばん!


「おう!坊主。昨日はよく眠れたか?」

「…1階にソファがあって助かりました。」

「なんだ。一緒に寝ないんだな。」

「余計な配慮ありがとうございます。」

「はは!そんな怒るな。朝食持ってきた。食ってくれ。」


朝一番に来て何を言うかと思えば。

野暮な事はどこに行っても好きな人はいるな…


「くしゅ!ふむ。風邪かの?」

「学園長だし、噂されてるんですよ。」

「ルカが言うならそうだの。有名なのも困ったもんだ。」

「…そうですね。」


…誰とは言わないが。


「翔くん早いね〜おはよ〜」

「和歌先輩、おはようございます。網野さんは?」

「上で戦闘準備してる〜」

「おはようさんだ。姉ちゃんも今日は頼むぞ。」

「うん。頑張るよ〜。これ食べていい?」

「おう。その為に持って来たんだ。食ってくれ。」


網野さんはまだ降りてこないが、先輩は食べ始めてしまっている。

俺も頂くとしよう。

しばらく3人で食べてると網野さんが降りてきた。

目付きも違うから、もう戦闘モードみたいだ。


「食事感謝します。2人とも食べたら行くぞ。」

「はい。俺はいつでも行けますよ。」

「腹ペコじゃ力出ないよ。きりんちゃんも食べて〜」

「あぁ。町長殿、頂きます。」

「…お、おう?どうぞ。」


俺達は慣れているから気にならないが、町長にとっては衝撃的だったらしい。

言葉がどこか辿々しい。

先輩は面白いで済んでいたが、俺もこの変貌ぶりには驚いた。


「おい坊主。」

「はい?どうかしましたか?」

「こちらの方は昨日の嬢ちゃんか?」

「はい。網野さんは戦闘モードと通常でちょっと感じが変わりますが、同一人物です。」

「なんか、世の中いろんな奴が居るんだな…。」

「はは、そのうち慣れますよ。」

「普通なのは、姉ちゃんだけだな。」

「そうです…あれ?俺は?」

「あの大蛇蹴り飛ばす坊主も大概だぞ。しかも数時間で町一周したって聞いてるしな。」

「んー。2人なら同じこと出来ると思いますが。」

「がはは。そりゃないだろう!あまりおっさんをからかうもんじゃないぞ。」

「ははは。…別にいいか。」


町の門に魔物飛ばしたり、一緒に走ろうとか言っていたから無理じゃないが。

あえてここで言わなくてもいいかと思い、俺は話を流す事にした。


「町長殿。昨日の大蛇を討伐が今回の依頼で問題ないですか?」

「お、おう。それで頼む。回収に人は使えるようにしておくから言ってくれて構わないぞ。」

「はい。必要とあれば依頼いたします。では行くとしよう。」

「りょ〜かい。いってきま〜す。」

「はい。行きましょう。」

「気いつけてな。」


とりあえずは、俺が蹴り飛ばした方向に進む事になるだろう。

俺達3人は大蛇討伐に向かって出発したのであった。

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