結構マジでやってます。
みけな
終わらない始まり。
第1話 終わりは終わらない?
それは突然の事だった。いつもの帰り道。
やけに周りは騒がしいが、自分の声ははっきり聞こえる。
ここは…道路。
俺は…
髪を染めたりもしない、普通の高校生。
部活をまじめにやっていたからか、普通というには些か引き締まっているだろう。
家に帰って、また明日も学校かー。なんて会話をしていた。
それが唐突に、今終わろうとしている。
終わるのは何故か?
きっとここで最後になるだろうと思ってしまったから。
その理由は車に轢かれた事を知っていて、血が無くなっていくのを感じているから。
目の前で泣いている先輩。
優しくて時には厳しい。
長い黒髪に、日々一緒に部活を頑張ってる彼女はスタイルも抜群にいい。
俺の目標にしている尊敬できる人だ。
いつも人前で泣いたり、弱いと思わせることはしない。
そんな彼女が泣いている。いや、泣かせてしまったのかもしれない。
「どうしよう…止まらないよぉ…このままじゃ、翔君が、翔君が!」
そんな彼女に俺は。
「和歌せん…ぱ…ごはっ」
「だめだよ!喋っちゃだめ!じゃないと…翔君が!」
先輩は止めるが、これが最後になるのならどうしても伝えたい事が。きっとこの先、先輩が生きていくには必要な気がする。
「怪我は…ない…です…か?」
ただ頷く彼女。
「応援…してま…す。だか…ら、前を…むけ…」
彼女はボロボロと涙を流す。『前を向け!』は、いつも先輩が辛い時に口癖のように言っていた言葉。
これ以上喋る事が出来なく、五感があまりわからなくなってきた。目はかすみ、鼻につく臭いに。
…臭い?ー!?
俺はすぐに気がついた。すぐ側には横転した車と、おそらくガソリンの臭いに。
最後の言葉を全力で叫ぶ。
――ここから離れろぉー!!
それを理解したのか、声が届いたのか彼女は行動した。と思う。
声は届いただろうか?今となってはわからない。
目の前が白くなり眠りに落ちたような感覚で目の前が真っ暗になった。
♢
気がつけば制服姿で立っている自分が見える。
ここは…正門?
自分が何かを見ている。その目線の先にいたのは。
「ぉ、おねがいじまずー!ぐすっ」
ひぃ!?と逃げていく人たち。
さっと顔を背ける人までいる。
あーこれは、入学式の時だ。鬼の形相で部活の勧誘チラシを配る和歌先輩。
確か、花粉症とかで目をやられ。さらに前日に熱をだしたんだっけか。
懐かしく感じ、それに見入っていた。
「お、おねが…くしょん!…じまずー。ぐすっ」
と、彼女は過去の俺に紙を差し出してきた。
「……あ、ども。」俺はプリントを受け取った。
バドミントンしませんか!部活の勧誘チラシだ。
なにやら目が潤んでいて、とても可愛い…と思ったら。
抱きついてきた。
っ!!まてまて!なんだ、この展開は!
いやまて。俺はこの人を知らない。そう、初対面のはず!
ここは慌ててはいけない。余裕アル大人カッコイイ!
そう、自然にだ。落ち着けー俺。ヒッヒッフー…
と、頭の中で壮絶な戦いをしていたが、抱きついてきた彼女は息苦しそうで、なんだか熱い。
持っていたプリントが地面に落ちた。一気に重くなった彼女を支えていると。
遠くから叫び声が聞こえた。
「わかぁー!!保健室にいないと思ったら、やっぱりここか…ってどんな状況?」
彼女の友達だろうか、どんな状況?それは俺が聞きたい。
「えっと、プリント貰って、そのまま倒れこんできました。け、けして抱きついたりはs」
落ちたプリントを素早く回収した彼女の友達が俺を見る。
「おけーなんとなくわかった。その子保健室に連れて行ってほしい。…えっと、肩貸せばいけるか…」
なるほど、保健室か。はい。と短い返事をして、首元と膝下に腕を回した。お姫様抱っこというやつだ。
周りから、きゃー!!とかなにやら騒がしい。
涼しい顔をしている俺だが。正直、やせ我慢8割。おもっ…軽くはない。俺は彼女の友達に。
「すいません、今日入学したばかりで保健室がわからないので案内お願いします。」
…は!と我に帰ったように、彼女の友達は小走りで保健室へと案内をした。
♢
すると、ノイズが入ったように視界が色あせ暗闇に戻された。
その後は、しばらく何事もなく時間が過ぎていった気がした。
ふと今の自分について考えてみると。
―死。そう確か車に轢かれたんだったな。
死んだ後はどうなるか体験した人はいない。
天国か地獄に行く、お化けになり現世を彷徨う。まーいろいろな話がある。
なるほど。死ぬと過去の出来事を見るのか。
一人で物思いに耽っていると、誰かの声がする。
「――ルくん。カケルくん!」
呼ばれた気がして、俺はそっと目を開けてみる。
目の前には和歌先輩が、俺を覗き込み呼んでいた。
「…和歌先輩?」
過去にこんな事があっただろうか?うーむ…と考えてみる。うん、ないな。
するとコレはなんだ?和歌先輩に起こされたい願望とか?今度は夢でも見ているのか。
そんな和歌先輩を見ると涙を流した後があった。
「よかった…。生きていて。」
「…和歌先輩。」
そんな彼女に俺は自然と涙を指でぬぐい。頬に手を添えてその暖かさを感じて、お互い見つめ合う。
泣いたあとだからか、目が潤んでいてとても綺麗だと思った。
俺はそっと近づき彼女の唇に……触れずに先輩は立ち上がった。
「翔くん。コレどういうことだと思う?」
唐突に彼女は周りをきょろきょろしながら俺に尋ねてきた。
俺は寝ていた体を起こし、何事もなかったかのように…いや、嘘。内心バックバクです。
いくら夢とはいえ、先輩に!俺は!でも夢ならキスもしないで死んだ俺に少し優しくしてくれても!
なんて考えて立ち上がり周りを見てみる。
「…森ですね。」と俺。
「森だね。」と先輩。
「夢じゃないですか?」ばちん!
「いったぁー!!和歌先輩なぜに俺にでこぴんを。」
「夢じゃない。はい、次の考え!」
さっきの甘い雰囲気はどこへいったのやら。気のせいだったのか。
いつもの先輩らしく必殺技の一つ。『強でこぴん』をお見舞いされた俺は、額をさすりながら言われるがままに次を考えようとして疑問を口にした。
「あれ?てか、痛いって。俺は死んで夢を見ているはずなのに…ん??夢?」
「ふぅ。ではもういっぱt」
「っ!!!夢ではない!これは現実なのか!俺は生きて…いる?」
なんとか2度目のでこぴんを回避。夢じゃないかの確認を俺でしないで欲しい。
無理に出したような答えだったが、どうやら和歌先輩も同じ考えらしい。「だね。」とだけ返してきた。そして俺が起きるまでの話をしてきた。
「えっと…翔くんといつもの帰り道で…何かがあって、目の前が真っ白になったわ。そして目を開けたらここにいたの。」
「つまり何もわからないと。」
「だねーどうしよっか。」
終わったと思ったが、終わってない?
さて、どうするべきか。うーむ。
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