第6話 あいつからの手紙

 あいつから、また、手紙が来た。

 相変わらず、汚い字で、殴りつけるような、怨みのある字で。


 “人間 ギリギリのところで生きてみて 初めて 分かることだってあるんだ

 ギリギリのところまで行きついて 初めて 見えてくるものだってあるんだ

 でも 誰も そんなギリギリなところまでなんか 行きたがらねえ 

 その先に 必ず幸せになれるなんて そんな保証はねえからな

 だから てめえは いつも なんとなくのところで 右往左往してやがる

 中途半端な泥沼で てめえは いつも あたふたしてやがる

 そんなに深くもねえ 中途半端な泥沼で 

 さも もう少しで溺れてしまうかのように

 必死に首だけ出して ジタバタしてやがる

 根性決めて 思いっ切り身を沈めて

 沼の底にたどり着いたところで ポンとひと蹴りすれば

 溺れかけている泥沼から 抜け出すことが出来るかも知れないってえのにさ

 その度胸が無くて ただただ いつまでも あたふた ジタバタしてやがる

 けたくそ悪くて 反吐が出らぁ

 おまけに 同じ様な奴ら同士で 寄り添い 群れて 慰め合って

 みんなでもって あたふた あたふた ジタバタ ジタバタ

 情けねえったらありゃしねえ

 抜け出せねえのかよ 抜け出せねえのかよ

 同じ様な奴らと 群れて 慰め合って あたふたしてる方が幸せなのかよ

 情けねえったらありゃしねえ

 抜け出せねえのかよ 抜け出せねえのかよ 抜け出す気もねえのかよ

 情けねえったらありゃしねえ

 そのうち ついには力尽きて 一人沈み 二人沈み

 みんな溺れて行くって分かってても

 それでも みんなで一緒に 首だけ出して あたふたジタバタやってやがる

 情けねえったらありゃしねえ

 いったい いつまで続けるんだよ この 糞のような人生を

 いったい いつまで続けるんだよ この 糞のような人生をよ”

 


 これで何通目なんだか、

 あいつからの手紙。


 



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