第46話 もうすぐ夏か

 梅雨の晴れ間である。

 昨夜までの雨も止み、みずみずしいキラキラした世界が広がっている。

 アジサイの花の雨のしずくも太陽の陽射しを浴びて輝いている。


 試験勉強から解放された彼女の提案で、久しぶりに河原へ老犬を連れて散歩に行くことになった。


 河原に来てみると、遠くの雲の切れ間から幾筋もの陽の光が差し込んでいる。

 ふと見上げると、ちょうど私たちの真上だけ雲が無く、青空が覗いている。


 青空と言うより宇宙って感じの(行ったこと無いけど)深く濃く青い空間がぽっかり開いている。

「こんなに青かったかなあ」

 本当に吸い込まれそうな…

 吸い込まれてみたいような…

 そんな青である。

「なんか、空の上の湖みたい…」

 と、彼女。


 私たちはしばらく、そんな空を見上げていた。

 老犬は不思議そうにそんな私たちを見つめていた。


 やがて、気温が上がって少し蒸し暑くなってきた。


 そうだ。

 今はこの梅雨空のおかげでそんなに暑くは無いが、この雲の上には、もう、夏の太陽が控えているんだ。

 暑さに弱い私が、

「もうすぐ夏かあ~」

と、呟く横で、

「もうすぐ夏か!!」

と、彼女が目をキラキラ輝かせている。


 雨の後のみずみずしい輝きの中で、河原の若草たちが鮮やかに生き生きと煌めいていた。

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