第62話追儺
「では、これより
それは
――否、式神であった。
横に
方相氏は黄金の四つ目で四角く、のっぺりとした面を付けており。……一本足の高下駄を
「此度は趣向が少しばかり違うのじゃな」
「ほほ、
方相氏が戈を振るうのを観ながら、百官達は、こそこそと内緒話をする。
「鬼やらい! 鬼やらい! 鬼やらい!」
その後ろからは、
追儺も大詰めとなり、方相氏と陰陽師に
群れは大内裏内の四方にある、全ての門の前に集まる。
「鬼やらい!」
忠平の掛け声と共に、数人が桃の弓を構え、四方へと
それとほぼ同時に門が開け放たられ、
俄かに花城に響く鼓の音が将門の耳にも届き、振り向く。
遥か遠くに見える、大内裏の朱雀門から出てくる方相氏達。
「今年は刻限が変わったのか。……」
――将門は胸に溜まった疎外感を吐き出すように、白い息を吐く。
流れゆく人々と方相氏を見る表情は
将門は、また一つ白い息を吐いてから、流れに逆らう様に歩きだす。
聞き覚えのある声が将門の歩く方向からする。
女を両手に
すれ違う時に将門と純友は目が合う。……が、どちらも声をかける事もなく、表情をなごませながら、別々の道を歩いて行く。
しかし、人の気配は無く、そこかしこに刀傷や矢の痕や爪痕が残り、荒れ放題であった。
「まだ、
将門は戦いの痕を懐かしむように、ゆっくりと撫でる。
「っ!」
将門は
息も絶え絶えとなりながらも、将門は己の内で暴れる呪を鎮めようと、目を瞑る。
「もし。――もし、
将門の背後から不意に掛けられる、男の声。
「大事ない。……少し休めば」
声の主に振り返る事なく、絞り出すような声で返事をする将門。
「人の身で、その
背後の者は涼やかな声で、一部の者しか知らない、将門の背負った呪の事を語る。
「何故、知っ――」
そう言い掛けながら将門は何とか振り向く。
――そこには
将門は男の瞳を見た瞬間。何かに全身を押さえつけらた様に満足に動けなくなり、口から言葉も出なくなる。
「返上してもらう。が、正しいかな?
その男は
がらん、がらんと
鳴り止んだ時には、将門と男の姿は羅城門から、影も形も無く、消え失せていた。
羅城門の上に留まる
「あれは平将門が神隠しに。……いや、鬼に
男は都の
そして、平将門に対しての興味が鎌首を
「……うさま! 何処におられますか!」
その大声に反応してか、男は心底嫌な顔をしながらも下へと降りる。
付き人の一人であろうか。声を上げながら、必死の形相で羅城門の方へと向かってくる。
「
軽薄そうな笑みを浮かべながら、手を振る男。
付き人は駆け寄り、安堵する。
「
さめざめと泣いた振りをする付き人。
それを見ながら、興世王と呼ばれた男の顔から軽薄そうな笑みが消え、苦虫を噛み潰した様な顔となる。
将門が気がついた時には、既に周りの景色は変わっていた。
何処であるか分からない、
「さて、術を解くけど。……斬り掛かったりしないでくれると嬉しいな。君の敵ではないから」
男はそう言いながら左手を離し、そのまま指を鳴らす。
押さえ付けられていた、何かは取り払われ、身体の自由を取り戻した将門は大きく息を吸って吐く。
「最初は化生の仲間かと思ったが。……まだ首と胴体が分かれていない所を見ると。……違うようだな。何者だ?」
将門は自らの首を右手で摩りながらも、左手は太刀に触れ、警戒を解かずに問い掛ける。
男は腰に括り付けていた
「
将門の対面に座る、自らを酒呑と名乗った男は瓢箪を将門の目の前に差し出す。
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