第16話ニシの幕間
やっとの事で
暴の限りを尽くされた死体が転がる船上……
血で汚れ、読みにくくなった文を見ながら溜息をつく。
「ああ……やはり駄目だったか、追跡命令も出さなければ良かったかもしれないな」
好古は持っていた文をぐしゃりと潰しながら、さらに深い溜息をつく。
「屈強な男がこんなに簡単に……化け物ですかい?」
歯の欠けた水夫は
「……どんな男でも
割られた頭の男を少し持ち上げると、
男達は光景に我慢ならず、海に胃の中の物、全てを吐き出す。――
「うむ、では……京に報告に戻るか」
その好古の言葉に
「長官、よろしいんですかい? 純友の野郎を地の果て……あいや、海の果てまで追いかけなくて?」
さらなる
「ああ、これ以上は
さらに
「それは……武芸に
皆があんぐりと口を開け、
「おうよ、土に足つけてなら、五分五分の良い戦いが出来るだろうが……海の上では
溜息を吐きながら、
「あとな文に書いてあったのだが……散々に暴れまわって好き放題したが、日ノ本には戻らないし、官位は返すから許せと書いてあったぞ」
くつくつと笑う好古。――
「今頃、純友は新たな大地に、新たな冒険、新たな宝の山を目指して西に向かってるだろうよ」
「それと
そこからの男達の行動は速かった。
男達は壺を持ち、壺内の
赤々と燃えながら、船が黄泉への旅路に向かうのを苦い顔をしながら見送る好古達。
「迷わずに向こうへと渡れ……祖父、
一方その頃。
「うむ、先に
陥落した後だというのに、妙に活気に満ち溢れていた。
「他の純友に襲撃に遭った国と似たような状況だな……民は元気に商売や仕事に精を出し、目立った酷い被害は建物以外、あまり無し」
意気消沈しながら、満仲の前を横切るように歩く、裂かれ、汚れた朝服を着込んだ官人らしき男。
「おっと……忘れていた、主に官人。とりわけ、不正を働いていた者は酷い目にあうとな」
筆をさらりと動かしながら、
「陛下への報告ですね、民には他の筋書を流布するでしょうが」
「親父殿……これは民にも語れない、書にも記せない事……だが、誰かが真実を知っておかなければと思うのです……誰かが」
「その話を聞けば、将門も……喜ぶでしょうね」
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