将門追討 燃ゆるアヅマ
第6話シビトの宴
森から幾羽もの烏が何かから逃げるようにガーガーと鳴きながら慌ただしく飛び立っていく。
しばらくしてから地鳴りと間違うほどの
集団の歩兵は一様に
先頭を率いる大将らしき人物は
その顔に深く刻まれた
「叔父上、
「五月蝿いわい
小突かれ、ずれた兜を被り直しながら貞盛は小声で口をつく。
「親戚に
「聞こえてるぞ、貞盛ぃ!」
また
「地獄耳ですね、叔父上……しかし、討伐に向かうのは良いのですが……征東大将軍――
「陛下から
髭を触りながら思考を巡らし貞盛に問う。
「
「分かりませぬ、親父殿が死んで私が戻ってすぐの時は"まだ"でしたね……そこから先の事は隠れたり逃げまわってましたからなぁ」
「やはり、しっくりとくる言葉は――いつの間にかですね……秀郷叔父上、勝てますか?」
「うむ……正直なところ、お前さんや
ニヤリと秀郷の口角が上がる。それを横目に見ながら釣られて貞盛の口角も上がる。
「さて、森を抜ければ
貞盛が指差す方向には、確かに小高い丘があった。
「よおし、お前らこっからは気を抜くなよ! 警戒して進め!」
秀郷の掛け声により意気揚々と声を上げながら進んでいく。森を抜ける――
森の中では草木と土の匂いで掻き消されていた、モノが
「うぐおええー」
耐えきれずに幾人かは、しゃがみ込み
「この匂い、叔父上これは!」
「貞盛! あの丘に上がるぞ、急げ!」
馬を駆け丘にあがった秀郷と貞盛の眼前に広がるモノの大群、ゆらゆらと揺れ動き、ゆっくりとした動作で進む、かつては人であったであろうモノたち。
「
手で口鼻を懸命に押さえ、
「貞盛……後ろにいる兵たちを纏め上げるんじゃ。士気も砕けてるだろうから
「わかりました……叔父上は
「ふん、単騎駆けなんぞせぬわ……ただ
その言葉に
嘆息しながら秀郷は下馬し、
「どう思う?
見えず、聞こえずの、
「確かに儂と似ているところもあったがのう……これはまるで、
矢筒から流れるように一矢を取り出す。
大弓につがえず口元に持っていき
「確かに直に見てみぬと分からぬな……さて、力をまた貸して貰うぞ龍神の姫よ」
大弓に矢をつがえ大声を出す……その声は符を通してさらに大きな音となり響く。
「遠からん者は音にも聞け! 近くば寄って目にも見よ! 我は
天高く放たれる矢。――それは
その大口により人であったモノたちを一切合切、全てを文字通り飲み込んでいく。ぐねりぐねりとうねりながら天高く戻ってゆく。
「うむ、綺麗になったな」
一人で頷きながら
「叔父上、これは
「阿呆が……あれが
どこか悲しそうな表情を浮かべる秀郷。
その瞬間――何もなくなった平野に
「なんじゃ……このどす黒い
その
『
おぞましい声が
「
負けじと秀郷は大声で返す。
『我は
「クソ餓鬼が、大口叩きおって! 」
秀郷は素早く大弓を構え矢を
「ちっ……あれは
秀郷らは拭いきれぬ程の恐怖と、不安を胸に東へと足をさらに進めていく。
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