放課後、理科室で…
南萠衣
#1 永倉美緒side
春。音楽室の窓を開けると、すぐ近くまで手を伸ばした桜の木がこちらを見ていた。我こそはと花を咲かせ、甘い香りを誘う。私は伸びをしながら、穏やかな春の空気をゆっくりと吸った。
時刻は7:30。春休み中の部活開始時刻は8:30。早く来るのに理由はない。でも何故か、この時間を音楽室で過ごすのが当たり前になった自分がいた。私は深い欠伸をした。そこに見慣れない車が止まるのが目に入った。
「お、新しい先生かも…!」
みんなより一足早く見てやろうと、窓から身を乗り出した。それと同時に白の軽自動車から出て来たのは、ショートヘアでパンツスーツを来た女性だった。顔はよく見えなかったが華奢な体つきな人だった。
後日、就任式の日にこの女性の顔をじっくりと見た。
矢澤夏海先生。教科は理科。顧問は女子テニス部。
決して絶世の美女というわけではないけれど、あの時もみた華奢な体にショートカットと少し低めの声はどこか魅力的だった。
この出会いが私の人生を180°変えてしまうなんて私はまだ気付かない。
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