第三十七話:恐怖、再来



第三十七話:恐怖、再来




 曰く、人とモンスターの関係は曖昧なものである。


 こと、ゲームとして見るのならばそれはただの設定だが、土台から派生する全ての結果が「設定」だとは、誰であっても断言することは許されない。


 現実世界、リアルと呼ばれるその世界でさえ、決められたルールに則って粛々と回っている。


 世界は地球という天体の上に成り立ち、太陽はその軌道をいたずらに変えることもなく、現象は全て決められた反応しか示さない。


 北半球において太陽は東から昇り西に沈み、火は熱く、風は吹き、植物は酸素を吐き出し、動物は骨に肉を纏い自然の中を闊歩する。


 有り体に言えば、それらは全て世界のルールだ。地球という天体が存在する、宇宙の「設定」と言い換えてもして突飛な話ではない。


 新発見の出来事は、正しく発見しただけに過ぎず、その組み合わせを創りだしたわけではない。


 そう、全ての現象は、初めから決まっているものなのだ。その「設定」が細かなものであればあるほど、組み合わせが膨大であればあるほど。先が読めないというだけのことだ。


 世界全てがそういうものだ。作り物だと明言すれば、全ての結果が意図されたものだと考える人もいるが、それは一面から見て正しくない。


「……」


 学習性AIとは、感情の種だとよく喩えられる。

 膨大な組み合わせの果てに見える、人と同じ心という不可視のもの。それを肯定するかしないかまで考えが及ぶのなら、そのAIは既にだいぶ成長したというべきだろう。


 AIは初め、赤子よりも覚束ない存在だともよく言われる。人の手で、成熟したAIの手で、様々な事を学び、捉え、考えて、そしてようやく種は芽吹く。



 成長には時間がかかるが、それだって仕方がないことだろう。感情というものはそういうものだ。例え人間であったとしても、誰とも関わりを持たないまま育てられれば、心無い生き物へと変わるのだから。


 AIがそうでないとどうして言い切れるだろうか。いや、人間ならば死した例も多いと聞く。遥か昔のその実験が、正しく後世に伝わっているというあやふやな前提の限りだが。


 何が言いたいのかと問われれば簡単だ。「設定」として土台が固定されていようとも、そこから派生する全ての結果は決められたものではない。そういうことが言いたいのだ。


 しかし、人は作り物を嫌い、いとい、遠ざけ、見向きもしない。


 さて、ここで問おう。人間よ、「彷徨い人」よ。仮初め、友と呼んだ者よ。



『――――汝、われを肯定できるか?』



 ――問いは、純白の輝きによって発されていた。


 否、正しく表現すればその限りではない。その輝きは、獣であった。


 額にのびる、短くも長くもない螺旋の角。純白に輝く短い体毛に覆われたその体躯。筋肉の動きがはっきりと見て取れる美しさは、野生動物の真骨頂とも言えるだろう。


 2つに割れたいぶし銀の蹄が岩を打ち、そのたてがみを揺らしながら、紺色の瞳が相対する者を見定めるように瞬いた。


 澄んだ夜のような色合いを湛え、その瞳が再び無言の問いを投げかける。問いを投げられたその人物は、ゆらゆらと揺れる水面を見つめながらじっと深く考えている。


 ゴーグルを外し、ツナギの前の部分を肌蹴させ、その人物――雪花は熟考の果てにその問いに答えを返すべく口を開く。


 ライオンの尾を揺らし、その返答が気に食わないとなれば一突きで雪花をほふりそうな獣――ユニコーンと呼ばれるモンスターが、安易な答えは許さないというように低くいななく。


「……またその問答?」


『……』


 肯定すらも、既に発した問いへの無粋な飾りつけだとでもいうように、その蹄が軽やかに振り下され、岩盤を割る。苛立ちさえ込められているようなそれに対し、怯むことなく立ち続ける雪花が軽く軽く口笛を吹き、すぐに笑みを消してまっすぐにユニコーンと対峙する。


 幾度目かの月陰り。雲がその光さえ遮って、黄金色に輝いていた水面の光が失われる。焦りもせずに雪花が暗闇の中で唇を歪め、笑みの形となったそれがゆっくりと動いて言葉を発する。


「――行くよ、もっさん」


 苦笑いと共に、雪花はユニコーンが声を発する間もなく、ひらりとその背に飛び乗った。






























































 ぱん、と。軽いような重いような複雑な音色と共に、幾度目かの銃弾が敵の胸部を貫通し、そして仕留めきれない分を補うように暗がりから躍り出たギリーが止めをさす。


 完璧な連携に無言のままぐっと親指を立て、ギリーが辺りの見回りをして敵がいないことを確認してから、安堵と共に声を発する。


「息が詰まる」


『無音、無言での行動はな。大分減らしたが、どうする?』


「……雪花の様子を見に行くか。捜索を続けるか」


 夜の森なう。と言えば可愛らしいが、やってることは全然可愛くない。敵を見つければ背後から忍び寄り、銃弾による奇襲の後、ギリーがおもむろに飛び出して仕留めるという必殺の構えを繰り返して早30分。


 他にも違うスキルを併用し、考察した結果も様々。まず【遠吠え】の効果範囲の検証だが、効果は強力だが、使いどころは非常に難しいものだった。


 【遠吠え】のスキル自体が既に周知されているという部分もあるが、それ以上に効果範囲が異常に狭い。今まで成功していた理由を考えてみたが、検証した効果が正しければ、あれは最初の1回を除き、おそらく自分の【遠吠え】は全て失敗している。


 どうやらモンスターとプレイヤーで、スキルの名前は同じでも制約や効果が異なるようで、どの場面を回想しても、自分1人で撃った時というのは、最初にルーさんと共闘した時だけだった筈。


 そうでなければ、敵さん方が硬直していた理由がわからない。推測するにモンスターとプレイヤーの制約の違いはまず人数の違い。


 2人固まっているところに【遠吠え】を撃ってみたが、距離が足らず成功しなかった上に、戦闘が終わった後に開いたスキル欄にはご丁寧にも、効果人数についての追加の文字。


「……効果があるのは1人。しかもランダム。効果範囲はすごく狭いし。奇襲をかけて効果範囲内に入れようとしても、【索敵:Ⅰ】に引っかかる。【隠密】でもカバー出来ない距離だし、しかも発動までのタイムラグが長い。使えない」


『近接戦闘中に体勢を崩し、絶対に逃げられない状態での追い打ちなどはどうだろう』


「そんな状況に持ち込めるほど強いんなら、いらないんじゃない? このスキル」


『手負いの獣は危険だ。兎を狩る獅子のように、オーバーキルに使えるだろう』


「……そういう使い方か」


 なるほどそれなら納得かもしれないと、ギリーと軽口を叩きつつ伸びをする。別にデータの肉体だから肩がこったりとかは……微妙にあるのだが、そろそろ適当に撒いた種がどうなるのか。結果がでる頃合いだろう。


「ギリー、ど? 大量虐殺とか起きてない?」


『常に風下にいるようにしているが、町からはまだ。食物の匂いがする。晩餐中だろう』


「……いいな、いいなー! アンナさんのご飯が食べたい!」


『しかし、色情魔はあれで良いのか?』


「手に負えなさそうだから、初めから期待してない。同士討ちで両方潰れてくれれば上々。雪花だけ生き残っても契約中だし、敵さんが全滅しなくても警告にはなる。数は減らないんだけどね、残念ながら」


『ふむ……適当にぶつけるには、良い人材か』


 ギリーの言う通り、雪花は適当に投げる石にしては威力がでかい代物だ。最初は敵さん方の戦意を削いでくれるだけで良いと思っていたが、あの動きを見るに奇抜な策でも考えて、敵さん方が全滅する可能性すら存在する。


 信用に足りないのかと言われれば、そうだとしか言いようがない。不確定要素が多過ぎる現状では使い潰すのが正しいだろうと判断したが……。


「……使い潰されるようには見えないから、上手くいけば一網打尽」


『そこまで強くはないと思うが』


「人間ってずる賢いから。特にあの手の人間は、小器用に立ち回るタイプだと思う」


 微かに唸りながら風の匂いを嗅ぎ分けるギリーの頭をそっと撫でつつ、『デザートウルフ』の弾薬を交換する。マガジンを引き抜き、新しいものをかちりとはめこむ。


 そうそう、昔、家庭教師で受け持った生徒にあんなノリの男の子がいたのを覚えている。音声のみの会話だったのに、発言が全部思春期真っ只中のエロ満載で、何度も母親にぶん殴られている音を聞いたものだ。


 そのくせ、妙に飲み込みは良く、口は達者で頭の回転も速かった。ああ、こういうタイプが世間で上手くやっていくんだろうなと思いつつ、ちょっとだけ劣等感を刺激されたのも良い思い出だ。


 よくよく思い出してみれば妙に発言が似ているのだが、まさか本人じゃあるまいなと、いらない心配をしつつ取り出した干し肉をがしがしと齧りながら顔を上げる。


 ギリーがおもむろに尾を膨らませ、耳をぴんと立てて警戒の姿勢。自然と自分の気も引き締まり、齧りかけの干し肉をしまい込んで油断なく銃を構える。


『主、背に』


「……来た?」


『嫌な臭いと共に。主の言う通りだ。アレは狡賢い、ただ……』


「ただ?」


『……評価を正そう。アレは狡賢いが、それ以上に勇敢だ』


 ギリーの背に乗り、その低い声を心地よく聞きながらホルダーに銃を叩き込む。背中の毛をしっかり掴み、背筋を伸ばしながらギリーが視線を向ける方向をじっと見る。


 声を殺し、耳を澄ませ、目を凝らし、唇を歪め、引き攣った笑みと共に声を上げれば、ギリーが即座に速度に乗り、風のように走り出す。


「おいおいおい――」


 咎めるような声が零れ、次に歪んだ笑みがひくりと震える。土くれが宙を舞い、神聖な夜を切り裂いて、その巨体は木々を薙ぎ倒しながら純白を追って駆けていく。


 音がしなかった、というのは言い訳だろうか。いやしかし、こうも全力疾走をされていれば、不審な音を捉えることが出来る範囲が狭いのも当然だ。


 木々を薙ぎ倒す音はするが、特におかしな点がある。木々を薙ぎ倒し、土を跳ね上げ、怒りに囚われるままに純白を追う見慣れた巨体。


 その巨体が声を上げていない理由が異様だった。よくよく見れば、顎を無理矢理に閉じさせる、幾重にも巻かれたロープがぎちぎちとひずんでいる。誰がやったのかと問うのは無粋だろうが、何故それを選んだと問うことくらいは許されるだろうと声を上げる。


「――陸鰐引っ張って来るなんて聞いてないぞ!」


 そんな叫びは風に囚われ、一角獣に乗って地を駆ける雪花には届かない。目指しているのは明らかに敵さん方がのんびりと晩餐中らしい、あの町だ。


 ギリーが陸鰐を追うように駆ける中、一角獣は迷いなく町を目指して走っていく。雄々しい螺旋を描く角が、輝きながら障害物を一太刀の元に切り伏せていき、それらは背後の陸鰐にぶつかってその怒りを加速させる。


 確かに雪花には敵さん方に警告をして、それに応じてくれなければ相応の手段でもって痛めつけてくれとは言った。

 そうは言ったがまさかその手段に、陸鰐を引っ張って来るなんて誰が想像できるだろうか。


 美しい夜は踏み荒らされ、陸鰐の走る後には少なくない被害の痕。いつ環境破壊として統括ギルドに目をつけられるかわかったものではない。


「うっそだろ、ふざけんな! 後々の被害をどうする気だ!」


『主はちぇーんそーなるものは予測したのに、凶暴なモンスターを連れてくることは予測していなかったのか?』


「だって雪花にチェーンソーって似合いそうだった――じゃなくて! 暴れさせた後の始末はどうなるんだよ!」


『撒くか、倒すか、食べられるか』


「……死に戻りして延々とあの町の教会から出て来るであろう敵さん方を囮にするか」


『ふむ、それがよいかもしれない』


 倒すという選択肢が欠片も存在しないのはご愛嬌だ。

 一角獣と、それに乗る雪花を追いかけて、無言を強制させられている陸鰐が怒り狂いながら木々をへし折り、土や泥を巻き上げる。傍から見ていればまるで何かの映画のようで、現実味のないような、ありすぎるような微妙な気持ち。


「逃げてー、超逃げてー」


 思わず棒読みで敵さん方に意味の無い警告を送り、しかしそれも目的の為には止むなしと、大して悩みもせずに割り切り終了。


 ギリーを駆って追いつかないよう、気づかれないように追いかけるが、陸鰐は怒り狂っていて気付かないし、雪花は雪花で振り返るほどの余裕はないらしい。


 手綱を操っているようだが、騎乗道具をどこから手に入れたのだろう。ギリーにも使える騎乗道具があれば嬉しいのに。


『主――! あれだ!』


「おおっとぉ、これは真正面からぶつかる模様だぁ」


 思わず棒読みで実況を開始。怒り狂う陸鰐を町の中にまで誘導する雪花の思惑は、すけすけのガラスよりもよく見える。


 疑似セーフティーエリアを破ったと言っていたが、破られたままなのか、陸鰐は然して気にする様子もなく、雪花を追って一直線に町へと踏み込み、手近な家がその余波で半壊する。


「えー……うそー」


 出来のいい造りではないようだが、煉瓦と木材で出来ているらしい家は陸鰐の尾が掠めるだけで倒壊し、見る間に3つは家を潰して、陸鰐は町の街路を駆け抜ける。


 敷き詰められた煉瓦はあっさりと踏み砕かれ、欠片を巻き上げながら、出来の悪い恐怖映画のように、通り過ぎるだけで家々を破壊していく謎の悪夢。


 雪花の乗る一角獣は、おそらく人が集まっているであろう家屋の1つの前で急停止。隙ありと速度を上げる陸鰐の突進をひらりとかわし、勢いを殺しきれない陸鰐が壁にぶつかるまであと数秒。


『ぶつかる――!』


「…………」


 そっと同情を捧げながらも、陸鰐が壁にぶつかり、あっさりと突き破るのを黙って見送る。ばらばらと煉瓦の壁が崩落し、大きく穴を開けた陸鰐が衝撃にふらつく中。中に居たのであろう人達が仰天した顔でそれを見ている。


 当然だろう、迫り来る音で気がつけるだろうとは言えはしない。町の中に踏み込んで、家々を突き崩しながら激突するまでの時間は驚くほど短かったのだから。


 ましてや、一度その大顎に嫌というほど追いかけられ、度胸も胆力も慣れもあわさった自分ならともかく、突然にあんな巨体を目にすれば、恐慌状態に陥ってもおかしくはない。


 安全だと錯覚できる屋内で、まさかちょっとした敵の警告を無視したくらいで、突然、壁を突き破って巨大な鰐が現れるなど、どんな冗談だと笑いたいくらいのものだ。


 黙って見ていれば、陸鰐の突進をかわした雪花が一角獣を手綱で操り、Uターンしたと思えば陸鰐に向けておもむろに腕をぐっと伸ばす。


 口を閉じさせていたロープはもう必要ないらしく、雪花が伸ばした腕の先から、真紅の炎が陸鰐を包みそのロープだけを焼き切っていく。


「――マジでか」


 ギリーに乗ったまま呆然とそれを見る自分と、大穴の開いた屋内の中、同じように呆然と炎に包まれる陸鰐を見ていた男と目が合った。


 どういうことだという疑問の視線に無視をしようとも思ったが、訳もわからないまま死に戻りするのはちょっとどうかと思い直し、簡潔に、わかりやすく、親しみを込めて、しかししっかりと親指を下に向けて意思表示。


「――――!」


 何かを叫ばれたような気もするが、そこは無視して鼻で笑う。アンナさんの手料理を食べ損なっている恨みを込めて、笑顔で手を振れば綺麗な追い打ちになったらしい。


 誰の差し金か、誰を怒らせたせいでこうなったのか。それがわかればもっと良いと思いつつ、泣きそうな顔でこちらを見る男に向けて、きちんと目の前の、現実を受け入れるようにジェスチャーで促せば、男は見ている現実を受け入れたくないとでも言うように青褪めながらふるふると首を横に振る。


 男の眼前――ぶちぶちぶち、と不気味な音を立てて戒めが解かれていき、陸鰐が背を仰け反らせながら百八十度近く大顎を開き切る。かなり不気味な光景だ。


 敢えてここで無視していた別の音声を入れるのならば、声にならない悲鳴だろうか。驚きのあまり言葉を失っている、というのが正しそうな様子だが。


『やりすぎだろ……! だそうだ』


「聞こえない、知らない、あいつ等が悪い」


 敢えて聞こえないふりをしていた男の叫びを、しっかりと聞いていたギリーが呟く。しかし自分には許せない。ギリーに聞いた時もイラッとはしていたのだが、実際に見て思う以上に腹が立った。


 暖かそうな内装に、湯気の立つ美味しそうなご馳走の数々。丸鳥を焼いたものに、飴色に光る豚肉のような料理、しゃきしゃきしていそうな緑のサラダに、香草が散らされた大きなマスが何匹も。パパイヤのような果実はメロンのように綺麗に切られ、盛りつけられ、赤い林檎が兎さん型に切られたキラキラしたものまである。


 大人数でそれを囲んでいるという羨ましさしかないその光景に、強要されたサバイバルゲームにうんざりしながら、1人虚しく空腹値のためだけに干し肉を齧っていた自分の心は、素直な気持ちを精一杯叫んでいた。


「そう、やってしまえと――!」


『清々しいまでに八つ当たりだ』


「地獄を見せてやれ! 人が苦労してるのにぬくぬくと家の中で美味しいご飯なんて食べやがって……!」


 ぐっと拳を握りしめながらの宣言に、理解を示したギリーが訳知り顔でうんうん頷く。見れば顎を開き切った陸鰐は静止していて、その停滞が呆けていたプレイヤー達に理性と打算を取り戻させる。


 魔術師は詠唱を始め、魔法使いはスペルを唱え、剣士達は自分の得物を抜き放ち、動きを止めた陸鰐へと先制攻撃を叩き込むべく殺到する。


 赤く開かれた口腔に、炎が迫り、鋼が走り、体内からそれを滅ぼさんと攻撃が一点集中。どうなるかと見ている間にもそれは勢いよく迫っていき、そして唐突にそれは起きた。


 ――――ォォォォォォン。


 叫びというには薄く、音とするには威力が過ぎた。陸鰐の口から発せられた不可解な音の波は鼓膜を揺らし、誰もが不快感に眉を顰める中。それでも止まらない炎の渦が、剣撃が、陸鰐を襲う一瞬前。


 随分と距離があるのにギリーがぶわりと毛を逆立てて飛び退り、一息に手近な岩場へと飛び上がって地面から逃れようと距離を取る。


 急な動きに慌てたものの、どうなったのかと陸鰐へ再び目を向ければ、その大顎がギロチンのように閉じられる中――、


 ――陸鰐の鼻先で、濁流が全てを呑み込んでいた。


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