第八話:ド級の初心者



第八話:ド級の初心者




 ゴロゴロと転がっていたはずのプレイヤー3人が、瀕死状態の時間を待たずに死に戻りして辺りが静けさを取り戻した後。


 事後処理こそがPKKギルドの真骨頂だと言うルーさんと共に、散らばっている装備品やらアイテムやらをひたすら地道に拾っていく。

 大半がよくわからないものばかりで用途も名前もわからないが、キラキラした石だったり、何だかよくわからない草の束だったりと拾えるものは様々だ。


「ルーさん。全部拾いましたー」


「ありがと、とりあえず被害者からぶんどった分があるかもしれないから、一回まとめて中央本部に運ぶから」


「了解です。……中央本部?」


「行けばわかるよ、大丈夫。さっき全体メールも届いたから、少しは問題も片付いてると思うけど、どうだろうね」


 ギリーの頭の上でぐだぐだしているルーシィが反応しないということは、おそらくプレイヤーが個人で作ったものだろうか。PK被害対策本部みたいな?

 なんだろう、わくわくする――と、1人うきうき気分で拾い集めた物を貸してもらった袋に詰める。


「そういえば、狛ちゃんはここに来るまでに何拾った? 結構色々アイテム持ってるんじゃない?」


 30キロも離れてた人は珍しいし、と少し心にぐっとくることも言われたが、アイテムと言われてはたと悩む。アイテム。何か拾えるアイテムとかあったんだろうかと考えこんでいれば、ルーシィが突如、愕然がくぜんとした様子で声を上げながらふらふらと飛び上がる。


『サ、サポート妖精ルーシィとしたことが不覚……! ゲーム初心者の相棒に、VRにおいてのアイテムのアの字も解説していませんでした! そうです! 色々拾えたのにっ!』


「初心者ってそこからのレベルなの!?」


 ルーさんが驚きの声を上げ、ギリーまでもがしまった……と呟く。話が見えない。何のことだろうと思えば、なんとVRにおいてアイテムとは色々と自然から採取できるものらしい。自発的に探して色々採れるんだとか。


「アイテムって……拾えるんだ」


 へー、と単純な感想を漏らせば、ルーさんが青い顔してちょっとステータス見せてもらっていい? と聞いてくるので、素直にステータス公開許可という部分をタップする。

 さっきの戦闘でちょっと上がったわーい、とか言っていたら更に青い顔したルーさんががっしと肩を掴んできて、ちょっとした圧迫感が。


「狛ちゃん、狛ちゃん? ギルドに入らなくてもいい。お兄さんが色々教えてあげるからしばらくは一緒に行動しよう。ね、ね? これはひどい。ひどすぎるから」


「え、ステータスが?」


「そう! 低すぎるよ、何もしなかったねさては!」


『契約後は歩きすらしてませんでした。スキル撃って熟練度上げとか、もうはなから効率なんて理解してません』


「よく死なずに来れたねここまで!」


『ギリー達がいましたから』


「なっ……! ああもうそっか。でもこれじゃあなぁ」


「上がってますよ?」


『「ぬるい!」』


 一応ステータスは上がったんだ見て見てと指先で突いてみるも、両方から怒られてしまい、ちょっと残念な気持ちでステータスをそっと閉じる。


 魔力が20になった、嬉しいとか言ったらやっぱり怒られるんだろうか。怒られそうだから黙っておこうと思いながら、色々詰めた袋を担ぎ、とりあえず行きましょうよ対策本部と言ってみる。


「……そうだね。情報屋からここらで拾える物の基礎的な情報を貰うといいかも」


「行きましょう! 対策本部!」


「ん? うん、行こうか」


 対策本部。きっと色んな人がいるんだろう。なんか昔のネットで見たこう、わいわいがやがや的な、そんな感じを思い浮かべ、うきうきしながら〝エアリス〟に向かって歩いて行く。


 塀のようなもので外側をぐるりと囲まれているその街は、あちこちに門があるらしく、目の前の門には5と描かれている。


「ここは5番の門って意味ですか?」


「そうそう。全部で……いくつあるのかは未確認なんだよね。ちょっと広すぎて」


「へー」


 もはや観光の気分である。わくわくしながらその重厚な木の門をくぐり、塀の内側に入った瞬間にルーさんがあっと声を上げて、総勢2人と7匹が動きを止める。


「ギリー以外の子はまだ外出てなさい。ちゃんと呼ぶから、ね?」


 えー、えー、とブーイングをうけつつも、そのまま流れに乗じて一緒に街の中に入ってしまおうとしていた4匹と1羽が呆気なくルーさんに門の外に放り出された。


「ちゃんと隠れてるんだよー?」


 と叫ぶルーさんに、フィニーとアレンが返事をし、ギリーだけが誇らしそうにそっと傍にくっついてくる。そのまま自分の脚の間に入り込み、背中に乗せて歩き出す様子を見てルーさんが呆然とした様子で呟いた。


「……そうやって甘やかすから体力値が全然上がってないんだよ」


『街の中で歩いても微々たるものだから諦めましょう』


 何やら言っているのを無視し、袋を肩に担いだままギリーに乗せてもらってゆっくりと周りの景色を堪能する。ベタに中世の外国のような街並み、というのだろうか。全体的にシックなベージュとかの色合いで落ち着いていて、がやがやとNPCノンプレイヤーキャラクターがいっぱいいて雰囲気がもうファンタジー! だ。楽しい。


「露天商みたいなものはないんですか?」


「ああ、それはプレイヤー達が街の中央にある中央広場とかでやってたよ。今は街に到着しているほとんどのプレイヤーはここ、〝始まりの街、エアリス〟の西地区に来ているから、もう少ししたら西地区中心にお店が出るんじゃないかな」


「へー、へー」


 ルーさんによれば、〝始まりの街、エアリス〟はどうやら円形の街らしい。かなり大きな街で、現実でいえば市よりも少し大きいぐらいだろうか。


 とにかく広い街らしく、円形の中心部分に中央広場というものがあり、初めはプレイヤー達もそこで店を開いていたようだ。しかし問題が起こったこと、このまま街のあちこちにプレイヤーが散っていては協力も何も出来ないことから、西地区にいったん〝中央本部〟というものを作り、集まろうというメッセージが全員に届いたらしい。


 そこでふと疑問がわきあがる。


「来てませんよ? メール」


「プレイヤーへの一斉送信メールっていってもね、距離に限界があるんだよ。そういう専門のスキルもあるんじゃないかとは言われてるけど、今はないね」


「納得しました」


 要するに〝始まりの街、エアリス〟から30キロも離れてれば届かねーよということだろう。

 他にも、ルーさんが言うにはこの街はその中央広場に向かって門から大通りが何本も真っ直ぐ通っているらしく、傘の骨のように広がっているらしい。


 大通りからは横道がいくつも存在し、全体的な広がりを見せているのだという。つまり門の数だけ大通りが存在し、ここは5番の門の道だから5番通りと言われているらしい。


 話を聞きながらもう一度しっかりと辺りを見回せば、あちこちに薬屋だとか食料屋とかの看板を見つけ、後で行ってみようと思った時に金が一文もないことを思い出す。


「……文無し」


「後で手伝うから色々拾いに行ってみようね? 売れたりするものもあるから」


「売れるんですか?」


「うーん。正しく言えば、その素材が欲しいけど自分で行く暇がない生産職とかに、採ってきますって交渉するのがほとんどかな」


「へー」


 面白そうだ。何かのクエストみたいだと思いつつ、ギリーに乗ったままずんずんと通りを進んでいく。西地区には確認されているだけで10本も大通りがあるらしく、途中から横道に入りながら7番通りにある中央本部を目指しているらしい。横道は大通りよりも少し細く、それでも十分な道幅がある。


「ついた。ここを出ると7番通り。中央本部は右に曲がって3つ目のとこ」


「早いですね。意外と近かったんだ……」


「そうそう。君の到着に僕らが駆けつけられたのもそのせい」


「なるほど」


 7番通りに出て右に曲がり、3つ目に位置する大きめの建物へと進んでいく。ついた、という声にそれを見れば、看板には奇妙な模様があった。竜が丸くなったような模様だけがでかでかと看板を占拠していて、文字はどこにも書いていない。


「ここが中央本部――正式名称は、いや、これも俗称だけど〝統括ギルド〟だよ」


「とうかつギルド?」


「そ。運営が管理している大元のギルドのこと。受け付けはAIか運営の人だろうね。色々と聞けば答えてくれるよ」


「ほうほう」


『ぐぬぬ……ルーシィちゃんの出番がますます……』


「はいはい」


 ギリーからいったん降りて、歯ぎしりをするルーシィをその背中に代わりに乗せる。袋をそっと担ぎ直し、木製の両開きの扉を押し開けば、そこは人で溢れていた。


 内部の構造としてはかなり広い。一番奥にはバーのカウンターのような、受付のようなものがあり、その奥にも扉があるようだが手前の空間はとにかく広い。


 飲食店のように大量に並べられた木製の丸テーブルと丸椅子に、色々な髪色の人達が思い思いに座っている。全部で50人以上はいるだろうか、その中でも大柄で、オレンジ色と赤色が入り交じったような派手な髪色の男がこちらに気付いてずんずんとやってくる。


「〝ルーちゃん〟じゃん! おーよジジイ、どーだ収穫は。仕留めたか?」


「3人組で、1人は男で剣士系。後2人は女で魔術師と魔法使い。そのうち男は錆びてても剣を持ってた。特定できるだろうから名前割り出して、載ってなければ追加。見た目も随時」


「へいへい、りょーかい。お、どーしたこの子。ちょっとガタイはいいが……んん? まだ若ぇな? 小さくて可愛いじゃねぇか」


「こ、こんにちは」


「はいよ、こんちは。俺は〝あんらく〟」


「あ、〝狛犬〟です」


 よろしくと言われながら手を差し伸べられ、恐々しながら手を伸ばして握手をする。ルーさんとは他のゲーム仲間としても知り合いのようで、あんらくさんは今はPKプレイヤーのリストを作っているのだとか。


「本当は俺はPKギルドに入りたいんだけどな。でもまあ開始直後の唯一協力しなきゃいけないって時にPKするやつってホント馬鹿な。しかもPKのうま味ほっとんどねぇし。なー、ルーちゃん?」


「僕がPKKギルドのギルマスだってわかっててそういう発言するんだから、君こそ将来大物になるよ」


「俺は良い子だぜ? MMORPGはみんなで楽しくやってなんぼだ」


「それについてだけは同感するよ、あんらく君」


 見えない火花が飛び散っているような気がして聞いて見れば、どうやら他のMMORPGでも同じ立場で争っていた仲らしい。そりゃあもうあんらくさんのPK活動は酷かったらしく、当時の中堅プレイヤー達に泣きつかれたルーさんがギルド単位ではなく、個人としてぶつかり合い、大立ち回りをした仲らしい。


「仲良しじゃないから」


「そうなんですか?」


「絶対仲良しじゃないから」


「そうですか……」


 どうも根本的な部分でそりが合わないらしく、あんらくさんはともかくルーさんはだいぶ相手のことを嫌っているらしい。それでも最低限の付き合いはあるらしく、目の前で楽しそうににまにまするあんらくさんに眉をしかめつつ、ルーさんがぽんぽんと自分の頭を叩きながら紹介をしてくれた。


「この子は通報の手違いの子。犬系モンスター5頭と契約してて、ここにいるのはその中のリーダー。で、アイテムを拾うっていうVRの常識も知らなかったド級の初心者。あんらく君。君、余裕あるでしょ。新人にカンパ」


「マジでそんな初心者いんの? 【Under Ground Online】に? そっかそっか、それじゃあお兄さんがプレゼントだ」


 そう言いながら懐から出てきたのは何やら綺麗な結晶だった。5センチくらいの大きさで、かくかくしてて痛そうな形だが、透明で綺麗に透き通っている。


「これは純晶石っていうアイテムだ。魔法系なら自分で【スキル】を込めるもよし、その他なら知り合いに込めてもらえ。それのレア度は2だからそこそこイイぜ?」


「……そんな貴重なものじゃなくてね、すぐに役に立つものをね? ねぇ聞いてるのかな、あんらく君!?」


「そうかりかりすんなよカルシウム不足ジジイ。こういう危機的状況をひっくり返す一発逆転の武器を持たせときゃ安心だろボケジジイ。他はテメェの仕事だ恵んでやれジジイ」


「このクソガキ……」


「貴重なんですかこれ? いいんですかそんなの」


「ああ゛?」


 ルーさんの口ぶりだとこれはとても貴重なものらしい。そんなものをどこから、というのはともかくとして、貰ってしまっても良いのだろうか。必殺武器らしいし、これは。


 本当に貰ってしまってもいいのかと聞けば、あんらくさんは俺は使わないとばっさりだった。


「俺は自分の拳で何とかしたい派」


「なるほど」


 それはすごいとうんうん頷けば、あんらくさんは自慢げに胸を反らしてから手続してくると言って行ってしまった。なんとなく胸を反らすポーズがルーシィに似てるなと思ってギリーの頭の上を見れば、ふてくされているのか毛に埋もれて羽根しか見えなくなっていた。もう少し放っておこうと思う。


「まあ、でも良いもの貰ったのかな」


 とぼやくルーさんを突っついて、袋をじゃらじゃらさせれば慌ててこっち、と歩き出す。中身は被害者の持ち物があれば返し、なければ貰っても構わないそうだ。

 緑色の長髪の女の人がいるテーブルへと向かい、袋を置いてお願いしますと言うと任せろーという気の抜けた声と共に、手早く袋から取り出されたアイテムが輝いていく。


「はーい、新規で来たから、やられちゃった間抜けはこっちおいでー」


 何とも刺激的な発言と共にわらわらと十数人が寄ってきて、お手柔らかにお願いしますよとか言いながら、それは自分のだとかそれは違うだとかり分けていく。


 緑色の髪の女性が1人ずつ話を聞いて、そしてアイテムを持ったまま自分のだと主張する人の身体に触れる。輝いたままだったら返してもらえるらしく、輝かなかった男に向かって拳が飛んだのには驚いた。


「嘘言っちゃダーメ。序盤のアイテムなんて自力で何とかしろー、次!」


 セーフティーエリア内だからダメージはないものの、ばつが悪そうな顔で男はそそくさと外に出て行く。どうやら本当に嘘をついていたらしい。


「あれは何ですか?」


「ああ、彼女は〝見習い占い師〟のアビリティらしくてね。過去にそのアイテムに触れたことのある人かそうでないかを判別できるスキルがあるらしいよ」


「ほほう」


 なるほど。本来の持ち主であるというのなら、過去にそのアイテムに触れていたのはその本人とPKプレイヤーのみということだ。流通が出来る前なら確実に本来の持ち主を割り出せるということか。


「いろいろあるんですね」


「そうだね。よし、終わったみたいだ」


「はいよー。余りはPKKした奴の取り分だよ」


「ありがとうサマンサ」


「はいはい。そっちも?」


「そう。手伝ってもらったんだ。超初心者だけど犬系モンスター5頭と契約してる子」


「いい面構えの犬だね。名前は?」


 突然こちらを向いた女性の瞳は薄いグリーン。綺麗な目がこちらをじっと見つめるのにどきどきしながらギリーですと答えれば、優しそうな手つきでギリーを撫でる。


「アタシは〝サマンサ〟。占い師だよ」


「〝狛犬〟です。よろしくお願いします」


 妙齢のご婦人といった風情のサマンサさんがにこりと微笑み、頑張んなねと頭を撫でてもらえたことに嬉しくなりながらお礼を言う。


 被害者への受け渡しが終わったアイテムを袋に詰め直してもらい、受け取ってから再度お礼を言ってあいているテーブルへ向かう。


「剣が残ったか……知り合いに生産職でもいたのかな」


「よかったですね。木の棒の時代終わって」


「いやいや。むしろ今からだよ棒の時代は。意外としなって使いやすいんだ」


「意外です」


「だろう?」


 他愛ない軽口を叩きつつテーブルに余ったアイテムたちを並べていく。剣の他は、ルーさんが言うには、ライン草が10枚に林檎が2個。袋に入った銀貨5枚。アミラ茸3個に、トラッド種の羽根8枚だそうだ。


 ライン草はそのままだと単に1枚で体力1回復。主に他の草系アイテムとかと組み合わせてポーションを作るためのものらしい。林檎はそのまんま、なんの変哲もない林檎。


 銀貨5枚は全部で500フィートのお金だそうだ。銅貨が10、銀貨が100、金貨が1000、白金貨が10000となっているらしい。これは統括ギルドの職員に教えてもらったとか。日本円と似ていて非常に覚えやすい。ただ単に単位が変わっただけともいう。


 アミラ茸は猛毒をもっているキノコだとかで、トラッド種の羽根もそのまんまだ。


「よし。剣だけ貰っていい? 他はあげるから」


「むしろ剣はいりません。いいんですか? こんなに」


「いいよいいよ。僕が持ってる分より全然少ないし」


「……ありがたく貰っておきます」


 それは確かにちょっとまずいかもしれないと思い、ここは素直に全部貰っておこうと思う。このゲームには便利なアイテムボックスは存在しないらしく、全て物理的に持たなければいけないらしい。


 一応、魔力を編み込んであって耐久度の高い袋が1人1袋なら統括ギルドの職員から貰えるらしく、袋の形もナップザック型からリュック型、腰ポーチ型と色々頼めばあるらしい。アイテム袋やアイテムボックスを作らず、現実にそくした形で持たせるゲームはとても珍しいんだとか。


「そういえば、死に戻りのペナルティは知ってる?」


「冊子でさらっと」


「一応、確認しとこうか。このゲームは死に戻りをすると、手元に持っているアイテム、武器、お金は死んだ場所に置き去りになる。そして身に着けていた初期装備以外の防具は消え去るという怖いシステムが存在する」


「怖いんですか」


「よく考えて狛ちゃん。今は序盤で貴重なアイテムも少ないからいいよ。でもね、このゲームが進めば進むほどその死に戻りのペナルティは重く圧し掛かるんだ。わかる?」


「ああ……あ、そうですね。確かに防具も武器もないし、お金やアイテムも死んだ場所に残ってるかわからないし」


「そう。だから多分、少しゲームが進んだら銀行とか貸金庫みたいなものがプレイヤーによって作られるだろうけど、それもはっきりいって万能ではない。つまり、このゲームでは負けて死ぬってことが実際に致命的なものとして存在するんだ」


 死に戻りするというわりには、身1つで戻るからあまり良いものじゃないって事だろうか。確かに大事なアイテムを持ったまま体力が0になれば、それが消えてしまうかもしれないのだから気が気じゃないだろう。


「統括ギルドに預けたものは消えないらしいけどね。数は限られてるけど」


「なるほど」


 流石にゲーム側も救済措置として、統括ギルドに預けるという部分をもうけているらしい。微々たるものでしかないと思うが、あるだけよかったと胸を撫で下ろした人が多かったとか。


「まあ、狛ちゃんはそれ以前に色々と知るべきだね。情報屋に色々貰って――」


「情報屋を呼びました?」


「あいかわらず話が早いね。頼むよ、ニコさん」


「お任せ下さい。ひっひっひっ、情報屋の――」


 〝(^_^)〟です。と。突然現れた長い灰色の髪の女性は、紙に書いたその顔文字をすっとテーブルに滑らせた。


「読めない!」


 と思わず叫んだのは、別に悪くなかったと思う。



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