金と銀の双斧

それは眩い太陽の色。

それは仄暗い月の色。

その輝きし双斧を携え、勇ましき者は往く。

己をただの木こりであると称し。

非力に見せかけ、あらゆる人を欺き。

しかし、その行いは悪ではなく。

むしろ善そのものである。

不当に強きを挫き、不当に弱きを救う。

そんな彼は、なんと呼ばれるべきであろうか。


「勇者さま!どうか助けていただきたい!」

「いやいやいや。見てわかりません?ほら、これ只の斧ですよ?」

「いえ、いえ!!只の斧であるはずが無いのです!おい皆の衆!双斧の勇者さまが来てくださったぞ」

「いやだから人の話を聞いてくださいよ。俺は単なる木こりなんですって」

「あら、村長ついにボケてしまったの?……あら?見ない顔ね?旅人さん?」

「あっはい旅人です。ってかこのおじいさんなんとかしてくれません?なんか勇者だー!とか言ってきてアレなんですけど」

「あぁ………どうかその斧でもって彼奴らめを……」

「ねぇ何!?人を御神体みたいに拝むのやめようか!?あーあーおじいさん?外ですよ?膝のとこ汚れますよ?」

「……村長がすいませんねぇ。この村もちょっと前からだいぶ参ってて」

「はぁ。まぁ……このご時世ですからね。ここらへんの地域まで、掃討部隊は来ませんからね……」

「えぇ。だからこのように村長も心の調子がねぇ………あら?」

「そうですか…あーもう、おじいさん?えー、村長さん?甘いものでも食べたらいいですよきっと。……ってなんですか。背中になんか付いてますか」

「斧。それも二本」

「えぇ。そうですけど……何か?」

「へぇ……村長は、ボケてなかったみたいね」

「えーと、後半聞き取れなかったんですが」

「宿を探してるんだろう?ならついてくるんだね」

「あぁ。そうです。どうもです」

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