ありったけの気持ちを花に込めて
カゲトモ
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「んにゃー今日も良いカズマきゅんでしたぁ」
ふわふわと巻かれた艶やかな髪、テレビで流行だと言っていた肩の出た洋服、ネイルはグリーンやブルーが水彩のように落とされていて夏を先取りしているようだ。
そんな一見リア充なハルさんは、推しの名前を言いながらカクテルグラスを空にした。
リア充はリア充でも彼女の場合は、二.五次元充である。彼氏は今いない。
「それはようございました」
「うっふふ、今回も神舞台でねー! カズマきゅんの衣装がこれまたエロカワで超眼福でした!」
にへらぁ、と喜びが隠しきれていないハルさんは嬉しそうに、次にマイタイをオーダーした。彼女はトロピカルカクテルが好きなのだ。
「実は今回、凄い神席で! なんと、前から二列目だったんですよ!」
「それは凄い。オペラグラスなしにカズマきゅんをご覧になれたんですね」
「いや、オペラグラスでもちゃんと見ていたんですけどね」
見てたんかーい。それ逆に近すぎて何も見えないやつじゃないの。
「もう、毛穴までばっちり見えるんじゃないかってくらいでしたよ、むふー」
あ、そういう事ね。限界まで近くて見たいって、そういう事ね。
「もちろん、裸眼でも瞬きしているカズマきゅんが見れて幸せでした」
瞬きしているのを見られて幸せって、なんか凄いな。もう彼が生きているだけで彼女は幸せなんだろう。
「あ、気持ち悪い事言ってもいいですか?」
もう結構アレですけど、とまではさすがに口にはしないけど。
「私絶対」
絶対?
「カズマきゅんと目が合っちゃいましたッ」
もう鈍器並みにハートが飛んでくるかと思った。絶対今、語尾に密度の濃いハートマークが付いてた。
「ふふふ」
「それは、ようございました」
彼女が幸せなら、俺はそれだけでいいんだよ、なんて。
「そうだ、今回もお花、贈られたんですか?」
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