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「最近は良く飲みに行かれるんですか? 例の大衆酒場に」

「え、えぇ、まぁ」

 なんと! 以前、浩太郎さんがお詫びにと連れて行ってくれた大衆酒場に! 蘭子さんとは結びつかないようなあの大衆酒場に!

超お金持ちと名高い鹿本グループのご令嬢で鹿本宝石店の社長である、才色兼備なバリバリキャリアウーマンの蘭子さんが、クラシックの中でフルコースを食しているのが常のような蘭子さんが、庶民の財布に優しい大衆酒場でデートしているだなんて! 蘭子さんも変わったものだ!

「ま、まぁ値段の割にとても美味しいし、お酒がちょっと薄いのが気になるけれど、ボトルキープとかすれば自分好みの濃さにできるし、とてもいいところよ」

「それに、浩太郎さんもいますしね」

「うっ」

 つい蘭子さんを茶化すのが面白くて。だって凛とした表情が恥ずかし気に歪むんだもん。

「まぁなんだかんだであの子には楽しくさせてもらってるってわけ」

「仲がよろしい様で良かったです」

 この二人も色々大変だったし。まぁまだ付き合ってないんだろうけど。

「そ、それにね」

「それに? どうされました?」

 急にもじっとし出した蘭子さんはおもむろにスマホケースを外して何かを取り出した。

「鍵? ですか」

 家の鍵? 失くさないようにそこに入れてあるとか?

「浩太郎の家の」

「えっいつの間に!」

 いつの間にそんな仲に! 付き合ったの!? 同棲してんの!? 俺聞いてないよ!

「こ、この間・・・」

「そうでしたか、それはおめで「とって来ちゃった?」

「は」

 今何と?

「いや、言い方が良くないわね! 預かってるの、そう預かっているのよ! この間浩太郎と飲んだ時に、鍵がどこに行ったのか分からなくなって困っているって言っていた時に、浩太郎の鞄の中で見つけたのよ偶然偶然よ。で、見つけたから教えてあげようと思ったんだけどなんだかんだでまだもっちゃってるって感じで」

 いや、その早口な感じとか絶対黒じゃん。スマホ持っているんだから教えてやれよ。

「ちゃ、ちゃんと言うわよ。鍵をもらうならちゃんと浩太郎から貰いたいし。ちゃんと言うから、絶対言うから、だから私がもっているのは秘密にしてね」

 そりゃ俺から浩太郎さんに言う術もないからね。ま、蘭子さんなら悪い様に使わないだろうから心配はしないけどさ。

「出来るだけ早くお返しになって下さいね」

「もちろんよ」

 そう言うとこ素直だしね。

「もうちょっとしたらね」

 本当に素直だよ、この人は。

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