龍と邪眼とツッコミと!? 2 ~異世界だからって天職に就けるとは限らない~
ブリしゃぶ
プロローグ
俺が異世界に来てから二週間くらい経ったのかな。こっちの生活にもずいぶんと慣れてきた気がする。
ん? 俺がそもそも誰だって? まあ、しょうがないか。町を出てから五日近くの出来事は何事もないように過ぎて、語ることも許されなかったからね。そりゃあ時間が空いて俺のことも忘れちゃうわな。オーケー。まずは俺の自己紹介からしようか。
俺は、立花クロト。どこにでもいる普通の高校一年生(そんなわけなかろうに。コイツは中二病隠してるオタクだよ! by神様)。
……んんっ。学校帰りに通称メイトへ新作のブルーレイを買いに行こうとしたんだけど、なんか奇跡的なスゴーイ光に包まれて、眼を開けたらこの世界――【ディオリオン】に転生しちまったのよ。
んで、このディオリオンって世界は、ドラゴンが大半を占める世界らしく、俺以外にも人間がいて、そこそこ共存して生きてるみたいなんだよ。しかも、この世界のドラゴン、みんな日本語を喋んのな。おかげでコミュニケーションはなんとか取れて今のところは乗り切れてるって感じかな(ギャップとツッコミどころは満載だけど)。そんで、異世界に来ちゃったのに今こうして主人公の様に俺がお話し出来てるのは、癪(しゃく)ではあるが俺の後ろを歩くコイツのおかげ。
色んな旅道具が詰め込まれた鞄を背負い、腰には何とも立派な剣をひっさげ、軽装のように見えるが自称けっこう堅く良質な素材で出来た銀色の鎧を身にまとい二足歩行で歩く――緑色の龍。
コイツの名前はナディスター。俺はナディスって呼んでる。コイツとの出会いは、俺がこの世界に来て直ぐに茶色い龍にパクッと食べられちまった時に助けてくれて、そのままこうして俺を居候キャラとして養ってくれている。どうして俺みたいな異世界人……この世界では異来人(いらいじん)っていうらしい、そんな無一文だった俺を養えているかというと、コイツの職業が狩龍人(かりゅうど)っていう野生の龍を狩って生計を立てる、モン○ン的なことをやってて、これがまた命がけの職だから儲かるらしいのよ。だからこうして俺たちは今、旅をしてるんだけど、特に不満不足なく生活出来てるってわけよ。
「おいオタク。なにさっきから俺の事ちょくちょく見てくるんだよ。キモチワリーナー」
……聞いての通り、コイツは俺のことを黒歴史ともいえるあだ名で呼びやがる。あと口も悪い。てかなんで、出会ってすぐに俺の黒歴史を掘り返しヒューマン出来たのかは未だに謎だ。
そんでもってコイツ、金があるからってメイドなんか雇ってやがるのよ。ただ……。
「……? どうされましたかクロト様? 長旅のお疲れが出て参りましたか?」
そう、今俺に話しかけてきた前を歩く女の子こそ、俺のオアシス……メイドちゃんである。
名前はリミアちゃん。本名は、リミア・ドラ・ホーリヤード。歳はまだ十四歳で、なんといっても……めっちゃくちゃ可愛いのよ! これがまた!
足なんか折れちゃうんじゃないのってくらいに細いし、世間一般の女子どもが気にするだるんだるんの二の腕やお腹周りだって程よく引き締まって、てかウエストもええくびれしてそうやな~。ただ……まだ、そ、その……む、胸の発育は、ま、まあこれからやな、って俺、なんで胸の話しするだけでこんなに緊張してんだよ。童貞丸出しやんけ。もはや独り言なのに……。まあ、良く言えば、そう華奢! あどけない美少女なんだよ! ほら、「小〇生は最高だぜ!」って言うじゃん! なっ! なっ!
それとね~。振り返った時になびいた少し明るめの茶色いツインテールの髪が弧を描き、光沢が日の光でより強調され天使の輪のように見えるですがね。てかさ、もはや天使そのものだよね、ここまで来ると。
「だ、大丈夫! 何でもないよ、リミアちゃん!」
「そうでしたか。難しい顔をされていましたがもしかして……」
リミアちゃんホント天使なんだよ基本的には。ただ――。
「ヴィーエル(BL)というものを意識されていたのでしょうか?」
「リミアちゃんはそういうこと言っちゃダメなのよぉぉおおおおおおお!」
こういう危なっかしい事をスラーッと言っちゃう御茶目、というか残念な子でもあるの。もうお兄さん泣きたい……。
かくかくしかじか……。
ど、どうにか誤解は解けたようだ……。てな訳で俺達一行は――。
「待った待った! ストーップ! 俺の事忘れてもらっちゃあ困るぜ!」
え……? ――あ~そうそう忘れてた。最後にコイツ――。
「あ、クロト。あとは俺がやるからいいよ!」
ふ~ん。……じゃあ任せるわ。
「おほんっ! そして俺がこのパーティーのムードメーカーこと、マサミカだ! ひょんなことからクロトと出会い、こうして一緒に旅をしている」
そうだったけか……? んーなんかそうであると思わされているような……。
「思い返せば……クロトとは色んなやり取りをしたもんだ。素性の分からないオタクな彼の為に自己紹介の機会を与えてあげたり、ジャングルのような森から抜け出させてあげたり、それから……めちゃくちゃ羨ましかったけど、リミアちゃんという天使のように可愛いメイドにも会わせてあげたんだよ。まあ、ちょっとクロトがテンション上げ過ぎてウザかったから、買い物に行かせた時は絶対にデートとは言わせないようにしてやったけどな」
ん……? なんかコイツの話しすげー引っかかるんだけど……。でも、確かにそんなやり取りですげー文句を言ってたような……。
「なんと言っても極めつけは、クロトの名前を漢字からカタカナに変えて読みやすくしたのも、この俺さ!」
――ッ!? ちょい待て……テメェ、まさか…………。
「だって流石に黒人って名前はヤバいでしょ! 最初は、コレキタ! って思ったけど、冷静に考えて人の名前としてどうかと――ちょっとクロト、何で鬼の形相で俺の胸ぐらを掴んでくるんだ! く、苦しい! やめてくれ! グウェッ!」
「……なに話し捻じ曲げて、しれっとパーテイーにはいっとるんじゃ……この……クソ神様がぁぁぁああああああああああああああああああ!」
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