いとうつくし
カゲトモ
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こんこん。
開店時間の三十分前、Closeの札が掛かった扉からノックの音が聞こえた。まさかまたあの幼馴染? 扉の向こうに『いるかと思ってー☆』とか言って立っているとか? うーん、あり得なくない。
けど、かと言って開けない訳にも行かないし。
「はい」
「わぁよかったぁ。いるかと思ってぇ~」
「わ」
予想通りの言葉だったけど、そこにいたのは予想外の人物で。
「ユイちゃんっ!」
「こんにちわぁ」
柔らかくにっこりと微笑むユイちゃんはお母さんになっても変わらず可愛くて。小柄なユイちゃんの腕に、これまた小さくて可愛らしい赤ちゃんが抱かれていた。
「赤ちゃん、生まれたんだね」
「はい。二週間前に生まれましたぁ」
「え、二週間っ!? 早く中に入ってっ」
「え? なんでですかぁ?」
「そんな生まれたての子を外の空気にさらしちゃダメなんじゃないの、とりあえず入って」
そうか、春に生まれるって思っていたから生まれてすぐなはずだもんな。顔だってまだ本当に赤ちゃんって感じだし。
「だぁいじょうぶですよぉ。あんまり綺麗すぎるところにいたらアレルギーにもなりやすいって聞くし」
「そうかもしれないけど、俺が心配なのっ」
「もぉ~スカイさんったら心配性なんだからぁ」
「そうなの、俺って顔に似合わず心配性なの。ほら、お茶でも入れるから座ってって、あ、まってスツールは高くて危ないから、低いイス持ってくるね」
「ふふふ、スカイさんなんだかおじいちゃんみたい」
うふふふ、と他人事のように笑うユイちゃん。おいおい、さすがにお兄ちゃんって言ってくれよ。
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