モノローグ~感謝祭に肉を食べる~

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 陸上部の彼女は、死んでしまった。


 殺したのは僕で、彼女の肉を食べたのも僕だというのに、今になって悲しくなっていた。

 もう二度と彼女に会うことは出来ない。

 僕は泣いた。


 しかし僕の心臓は彼女の血を僕の中に循環させていて、僕の脳に彼女が入り込んできているのかと思うと泣きながらでありながら笑い声が漏れた。漏れた笑い声が風呂場で反響して僕の耳に改めて入ってくる時には、声は湯気で温められたせいか僕が発した時よりも一段階人間らしさを纏っているように思えた。それを受け入れられるということは僕はまだ人間であり続けられると、なぜか安心した。

 人を殺したのは初めてだし、まして人を食べたのも初めてだ。

 ただ僕は人の愛し方が分からなくて、初めての愛の形が特殊だっただけで、人であることには変わりなかったのだと理解出来て安心した。


 風呂をあがると温まった体にバスタオルを巻き付け、滴る水も気にせずに台所に向かった。

 冷蔵庫を開ける。

 中にいる、彼女にキスをする。最初の頃は、運動部だからなのか汗の匂いがしていたのに、今はもう、そんな匂いはしない。

 いつまでも、魂のない彼女を愛し続けることは出来ない。


 新しい愛する対象を見付けないと。

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