ぱびりおんの日常
リュエン
0001あふたー「きのぼりでたいけつ」
さばんなちほーの水場。
水面は波も無く穏やかな様子を見せ、昼間であるにも関わらず、付近の平和を物語るような静寂に包まれている。
しかし先程まで、ここではとある勝負が行われていた。
隣接するじゃんぐるちほーから遊びに来たコツメカワウソと、水中で休息をとっていたカバによる潜水対決である。
結果はコツメカワウソが勝利し、カバも「私より長く潜れるなんて」と称賛する。
コツメカワウソは満足したのか、対決が終わるやいなや、すぐに水場を後にした。
──いや、満足したわけではない。次なる遊び相手を探しに出かけたのだ。
「次はだれとあそぼっかな〜!だれかいないかな〜?」
広く開けたさばんなちほーの草原をキョロキョロと見渡しながら歩く。
すると、遠くに見える木陰に1人の影が確認できたようで、早速走り寄ってみる。
「あ!おーい、サーバルー!!」
ごろんと寝転んでいたサーバルは、その耳のよさから、遠くから駆けてくる存在に声をかけられる前に気付いていたようで、すぐさま起き上がり右手を振った。
数秒して、サーバルの元に辿り着いたコツメカワウソは、開口一番にこう言った。
「やっほーサーバル!ねぇねぇ、今からいっしょにあそばない?」
「いいよ!私もちょうど暇だったんだ〜」
どうやらサーバル自身も暇を持て余していたらしく、相手の提案を迷うことなく了承した。
「何してあそぶ?」
「そうだねぇ…じゃあ木登りで勝負しよ!」
コツメカワウソの言葉に、サーバルは目を丸くした。
木登りは自分の得意分野で、そのことはコツメカワウソ自体も知っているはずだからだ。
「私、木登りはちょっと自信あるんだ。カワウソには負けないよー?」
「わたしもちょっとくらい登れるよ!それじゃあ、この木の…あの枝まで競走しよー!」
どうやら、コツメカワウソにも自信があるようだ。
2人は、自分の身長の何倍もある木を見上げ、コツメカワウソはそれなりに高い場所にある枝を指差した。
お互い、幹に爪をかける。
「よーい……どん!」
コツメカワウソの合図で、2人は一気に木を駆け登る。
爪の短さを己の器用さでカバーするコツメカワウソと、いつもの通り安定した動きを見せるサーバル。
勝負は、ほんの数秒で終わった。
「あー、負けちゃったかー」
「カワウソ、ほんとに木登りが得意なんだね!私びっくりしちゃった!」
ほんのちょっとの差でサーバルが勝ったようで、コツメカワウソは少し悔しそうな、それでも笑顔を崩さずに呟いた。
そんな彼女に、サーバルは称賛の言葉をかける。
「よっ…ほっ……と。ふー…あそんでくれてありがとねー!」
サーバルの言葉に自慢げな顔をしつつ、コツメカワウソは幹をつたいながら地面に降り立った。
一息つき、下から見上げるようにして手を振り、サーバルに感謝を述べる。
そして、相手の反応を見る前に、颯爽と走り去っていった。
「ふあぁ…。私はここでちょっと寝ちゃおうかな」
手を振り返してコツメカワウソを見送った後、せっかく登ったのだからと、サーバルはその場で眠りにつくのであった。
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